野草を摘み、鶏を〆てヘビを喰う自衛隊のサバイバルレシピにドン引きしました

レンジャー教育における生存自活(サバイバル)訓練は苛烈を極めていることはすでにお伝えしているとおり。

今回は自衛隊のレンジャー教育で学生が食べる”食事”についてご紹介したい。彼らは訓練中、並みの陸自隊員ならば躊躇するような通常の隊員食堂の食事や、野外炊具によって調理された温食とは全く異なる、ありえないもんを食しているのが実情だ。

レンジャー教育中の陸上自衛隊員。画像の出典 : 陸上自衛隊北部方面隊公式サイト「平成29年度レンジャー養成教育」https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/kunnrenn/rireki/29ranger/29ranger.html

レンジャー学生らは訓練の間、あらかじめ配給された少量の戦闘糧食を携行しており、レトルトや缶詰になった白米やおかずなどを頬張っている。

しかし戦闘糧食とて、通常は湯煎して食うものであり、状況ひっ迫時には温めている暇もなければ設備もない。固形状態のまま、口にすることも想定の範囲内だ。

自衛隊の演習で喫食される「戦闘糧食」って?陸自ではカンメシのI型がついに廃止へ!自衛隊の次世代野戦携行糧食を徹底解説!

数十キロの爆薬を背負い、夜通し駆けて木の根を枕に束の間の休息を取る潜入訓練中、頭にテリヤキバーガーを思い浮かべながら、冷たい戦闘糧食を食う自由くらいはあるだろうが、糧食は極端に少ない。

レトルトタイプの戦闘糧食2型

糧食一個、ときにはカンパン一枚をバディ(相棒)とともに分け合いながら食べる。レンジャー訓練とは精神力を養う訓練なのだ。

さらに「食糧の現地調達」訓練も行うレンジャー教育

さらに、レンジャー学生らは「食糧の現地調達」をも訓練し、その技術を習得する。これがいわゆる生存自活と呼ばれる訓練。つまりはサバイバル技術の訓練だ。ザ・ファブルでやってるやつな。あーあれかー。

なお、駐屯地の隊員食堂事情で書いたとおり、陸上自衛隊には「糧食班勤務」という、陸自の隊員全てが駐屯地で数カ月ごとに交代制で食事を作る経験を積むナラワシがある。メシを作っている主体は業務隊糧食班の常勤隊員とパートのおばさんだが、彼らに混じって臨時派遣を命ぜられた隊員も食事を作るのだ。

つまり、調理要員だけでなく、調理に関しては素人の隊員が食事を作るというのが、この陸上自衛隊特有のヘンな制度・糧食班勤務だ。

海自と空自では専門職たる給養隊員のみで調理しており、陸自のような「数か月間限定の臨時の糧食勤務制度」はない。なぜ、陸自だけ専門職でない一般隊員が交代制でメシを作るのか。

実はね、それもサバイバル訓練の一環なのよ。

有事の際、隊員一人ひとりがバラバラになっても生きていけるように……との陸自の親心という立派な理由がある。つまり、駐屯地の糧食班勤務も、広義では立派な生存自活訓練の一種なのだ。

さて、レンジャー訓練の生存自活では山中で手に入る野草、山菜などを食して生き延びることを教育されるほか、動物性タンパク質としてカエル、ニワトリ、ヘビも捕まえて食べる非常にキツイ訓練だ。

生きた鶏を絞めるときは、力を抜いて絞めると絶命に時間がかかり余計に苦しむため、手早く行う。

また、ヘビの場合は帽子のツバにヘビのキバを噛ませ、引っ張り折ってから一気に皮をはいで内臓を捨て、長い木の枝に巻きつけて焚き火で焼いてから身を食べる。誤ってヘビの血管を破ると血だらけになって非常に臭いものの、身は淡白で美味しいという。

本来であれば、ヘビもその場で野生のものを捕まえるのがサバイバル技術の習得訓練だが、そうそう都合よく野生の蛇が目の前に現れてくれるはずもなく、ヘビは事前に教官が食用のヘビを購入したり、レンジャー学生たちが自分たちで飼育しているヘビを食料として使用する。

このヘビはペットのように名前を付けられ大切にレンジャー学生たちに飼われており、アイドルの名前をヘビに付ける者も。

最近、小学校でやってる「児童がみんなで可愛がって育てたブタちゃんを最後はみんなで出荷してトサツしてもらって給食で泣きながらおいしくいただきます」みたいな児童の深層心理にトラウマ与えて、心に闇というか、ナニかを芽生えさせる”命の教育”を想起させる。

そして、ニワトリや蛇たちの命を供養するため、墓を作り、手を合わせるまでが彼らレンジャー学生たちの「レンジャー御飯」なのだ。

なお参考だが、アメリカ海兵隊は自衛隊も参加した合同軍事演習コブラゴールドで、サソリを食べてコブラの血を飲み、その肉を食った。コブラに限らず動物の血には糖・脂質・アミノ酸・タンパク質などが含まれており、極限状態では貴重な栄養源となるのだ。

もちろん、野生の生き物を食べる場合は生食は当然避けるべきで、火を通すなど加熱処理が必要。中国ではカエルを食べた女性が加熱が不十分であったがために、マンソン裂頭条虫に寄生され脳性マヒを負った例もある。自衛隊のサバイバル訓練も命がけだ。

また、生き物以外にも野草、山菜なども重要な食糧源となるため、教官から詳しく教育を受ける。タラノメなんて最高のご馳走だ。

ただ、レンジャー訓練とはいえ、なにも毎日蛇を食うわけではない。レンジャーも意外と普通に陸自における野外演習で食う温食などを食っている。

もちろん食器は飯ごう2型。食器で食えるのは教官だけ。なお食事中と言えど、常に戦闘態勢。気は抜けない。食べてる最中に敵の襲撃があれば、食事は中止。いつまでも食っていると教官からオラオラ連呼で食ってるものは即座に地面に叩き落とされるのである。

参考文献

いつでも食べたい!自衛隊ごはん(イカロス・ムック)
陸上自衛隊第36普通科連隊公式サイト http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/36i/seizonjikatu.html

小松さん、ちょっ、それ食うんすか!?レンジャー鍋

さて、レンジャー飯のトリは学生に根性を付けさせるため、いろいろな食材を入れさせた「レンジャー鍋」だ。雑草、木の芽、カエル、ヘビ、山の仲間たちをぶち込んで煮る。

レンジャー鍋については元自衛官の著書「逃げたい辞めたい自衛隊」で、○○を食べる記述がされているほか、劇画家の小林源文さんのある著書でも元自衛官の息子さんの話としてレンジャー鍋について触れられており、こちらもここで書けない○○を煮て食べたという一文があり、煮込みが足らず腹を下したと言及している。

レンジャーご飯のまとめ

レンジャーは極限状態での戦闘を常に意識して精神力を養うための訓練だ。訓練中の彼らが食うメシは私たちが毎食食べる食事とはかけ離れており、レンジャーを目指す隊員たちの厳しい訓練には頭が下がる。ビーッ(ヘビの皮を剥ぐ音)。

陸上自衛隊のレンジャー課程教育とは?