自衛官の愛用腕時計と入隊予定者のベストバイ腕時計は?

バナー画像の出典 陸上自衛隊米子駐屯地

自衛隊員が勤務中に着用している腕時計は隊員個人が自由に選んで購入した私物が基本だが、諸外国では軍が兵士に官給品として支給していた例もある。例えば、ベトナム戦争当時の米軍では安っぽいアナログ式腕時計を支給していた。

ただ、当時の官給品時計が現代の時計と決定的に違っていたのはDisposable(ディスポーザブル)、つまり使い捨て腕時計だったことだ。当時、これらディスポーザブル時計はマラソン社、ハミルトン社、タイメックス社など有名時計メーカーが大量生産して軍へ納入していたが、それらの時計の文字盤には銘柄はなく、いかにも軍の支給品、官給品らしい佇まいが特徴だった。

これら当時のビンテージ風ミリタリーウオッチの風格を再現しながらも、現代の高精度なクオーツや機械式機構を用いて、しかも求めやすい価格で復刻させているのがスイスブランドのMWCをはじめとするメーカーだ。また『75年を超える米国軍とのパートナーシップ』を表明するハミルトンでは『カーキフィールド』シリーズが人気だ。

またベトナム戦争当時の米兵からは日本のSEIKO社製品「セイコー5(ファイブ)」の人気が高かった。安くて壊れないセイコー5(ファイブ)は1960年代に発表されると瞬く間に人気時計となり、歴史的自動巻き腕時計の代名詞になった時計だ。現在でも製造されているが、国内より海外向けになっている。セイコーはさらに80~90年代においてイギリス空・海軍へクロノグラフを納入していた実績があることも興味深い。2000年代からは同社の『パルサー』ブランドのクオーツ式腕時計「パルサーG10」が空軍を除く、イギリス軍にて支給されている。

Navy SEALs隊員の腕時計に注目が集まる理由は?

水中浸透、空挺侵攻まで陸海空の戦場を選ばない特殊部隊といえば、米海軍が誇るNavy SEALs。そのSEALsの前身組織は海軍水中爆破チーム(Underwater Demolition Team, UDT)だが、ベトナム戦争の退役米軍人であるモキ・マーティン氏は1965年にUDT学校を卒業後に支給された時計は『チュードル(チューダー) サブマリーナ Ref.7928』であったという。

出典 https://www.hodinkee.jp/articles/talking-watches-moki-martin

その後、SEALs発足後は高級機械式時計の代名詞的存在であるロレックス製のサブマリーナが支給されていたという話もある。また、Navy SEALsといえば1993年、米軍装備品調達規格であるMIL-SPECに基づいた腕時計の開発を『ルミノックス』に直接要請して共同開発、納入されたのが『ORIGINAL NAVY SEAL 3000 SERIES Ref.3001』も有名だろう。

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NAVY SEAL 3000 SERIES Ref.3001

高い防水性のほか、それまでの一般的な蓄光よりも照度が高い自家発光システム「ルミノックスライトテクノロジー(通称LLTシステム以下LLT)」『ガスカプセル』により、画期的な腕時計として話題になった。当時、米海軍の調達担当者であったニック・ノース軍曹によれば、米海軍では『デジタルよりも信頼性に勝るアナログ式』腕時計を求めていたそうだ。

その後、2014年に公開された映画『アメリカン・スナイパー』(原作は著書『ネイビー・シールズ最強の狙撃手(英語版)』)のモデルである元Navy SEALsの故クリス・カイル氏の役を演じていたブラッドリー・クーパーが同作で着用していたことで注目が集まったのが、カシオのG-SHOCK『DW-6600』である。

(C) 2014 Village Roadshow Films (BVI) Limited, Warner Bros. Entertainment Inc. And Ratpac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.

劇中のクリスはイラクの戦場、帰国後の日常生活においてDW-6600を愛用している。実際、同氏の著書によれば、Navy SEALs隊員への支給時計は”デジタル式”であるカシオのG-SHOCKになったのだそうだ。下の参考商品画像はGのリリース40周年記念限定モデル『DW-6640』だが、ほぼ同モデル。大型のディスプレイが視認性向上に役立っている。

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自衛官のほとんどが『CASIO G-SHOCK』のヘビーユーザーだった!

冒頭で一般隊員には腕時計は支給されていないと書いたが、実は一部の特定職種に限っては支給される例もあった。

これは、あかぎひろゆき氏の著書『元自衛官しか知らない自衛隊装備の裏話』がソース元だが、 航空自衛隊と海上自衛隊ではパイロットに国産のクロノグラフを支給しているという。モデルは不明だが、市販品の裏蓋に管理番号とサクラマークを入れたものだったそうだ。一方、海上自衛隊のダイバーにはカシオ製の腕時計が支給されていたという。現在も続いているのかは不明だが、このように特定の隊員のみに腕時計が支給される例は実際にあったそうである。

さて、実際のところ勤務中の隊員はいったいどんな腕時計を付けているのか、実際に各隊員の腕元を見たり、さまざまな広報資料に目を通す。そこで見えてきた答えとは。


結論を言うと、自衛官から絶大なる信頼を得ている腕時計は日本のカシオが誇る壊れないデジタル時計、G-SHOCKだったのである。

画像の出典 https://www.youtube.com/watch?v=w9yUb8sDuzw&t=188s

G-SHOCKといえば、主に野外(field)でアクティブに活動するアウトドア派のための優れた時計としておなじみである。となれば、迷彩服を着用し、野外で任務に当たる普通科や施設科隊員といった自衛官にもカシオのG-SHOCKが圧倒的人気であるのも頷ける。

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とくに薄型・角形の5600シリーズは米国映画『スピード』にてキアヌ・リーブス演じる主人公の警察特殊部隊員が着用していたために一躍人気となり、通称・スピードモデルと呼ばれ、不動の人気を確立して久しい。

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オールブラックのDW-5600BB-1もかっこいい。現スピードモデルの中でも電波時刻修正・太陽光発電タイプの「電波ソーラー仕様」が好評となっている。

 

ちなみに「ハートブレイクリッジ(1986年)」にてクリント・イーストウッド演じる海兵隊の鬼軍曹がウェアリングしているのはCASIO DW-300。G-SHOCKの原型モデルだ。出典 Heartbreak Ridge

G-SHOCKのラインナップにはアメリカ国防省が制定した同国軍が必要とするさまざまな物資の調達規格である「MILスペック」を満たしたモデルもある。

実際の隊員を見ても、報道写真や広報誌MAMORを見ても、訓練ドキュメンタリーDVDを見ても、自衛官のG-SHOCK着用率は非常に高かったのである。

とくに演習などでは各員の1分1秒の遅れが緻密に計画された作戦行動の根幹を揺るがしかねない。それらも考慮した場合、電波で時刻を自動修正するタイプのGショックも好まれるようだ。

小銃を発砲した際に手首にかかる強烈なショックは自衛官の腕時計選びを悩ませる。やはり定評のある耐ショック・デジタル時計G-SHOCKが無難な選択なのか。

耐久性、それでいて低価格のG-SHOCKは自衛官だけでなく、米軍兵士や米国警官の間でも定番。自衛隊、米軍、米警察などにおいて彼らの”相棒”として、第一線で活躍していることは間違いなさそうだ。

知恵袋で「カレシが自衛官なんですけど、腕時計のプレゼントでオススメはありますか?」なんて尋ねたら、まず間違いなく回答者の自称隊員や、ミリオタに薦められるであろう時計が、このGショック。

カレシが自衛官という女性はぜひともカッコいいのを一つプレゼントしたいところ。もちろん、彼女が自衛官というモテモテの男の子だって同じだ。

なお、次点で同社のプロトレック愛用者も多いようだ。

というわけで、高級腕時計をつけている自衛官というのは多数派ではないようである。

「自衛隊公式腕時計」とは

さて、ネット通販で見かけることの多い「自衛隊採用腕時計」なるものを皆さんはご存知であろうか。

場合によっては「防衛省本部契約商品」と表記されている場合もある。これらは自衛隊で隊員に公式に支給されている時計なのだろうか。

いいや、前述のとおり、自衛隊では隊員に腕時計を支給してはいない。どうやら言葉のマジックのようで、自衛隊の許可を得て自衛隊のマークを「採用」して「自衛隊をイメージしている腕時計」であり、隊員に任務上の必要性から支給されている「官品」ではない「市販品」ということになるようだ。

製造しているのは国内のメーカーで、防衛省本部契約商品として駐屯地や基地の隊員から注文を受け付けているという。陸海空の3部隊をそれぞれのカラーと公式マークでイメージしており、通好みのデザインだ。

ただ、ネット上の意見を見てみると 「使っている隊員を見たことがない」とか 「(例えば会社員なら)自分で金を出して自社のロゴの入った腕時計は買わないと思う」 など、なかなか辛辣な意見もあるのが実情だ。

あくまで自衛隊ファン向けの自衛隊グッズと見たほうが良いのではないだろうか。皆さんも「自衛隊に入れば、あんなカッコいい時計が隊員に一律支給されるでゴワスか!!」とくれぐれも勘違いされないよう注意されたい。

自衛隊と腕時計のまとめ

「自衛隊員が日々、腕もとに着用している腕時計は?」という主旨のこの記事、いかがだっただろうか。

現在の自衛隊では隊員に腕時計を支給していないのが実情で、多くの隊員は私物のG-SHOCKを使用しているという結論に至った。ただし、自衛官は全員G-SHOCKというわけでは、もちろんない。

セーラー服の腕もとに鈍く光るゴッツいG-SHOCKを想像すると、もう、なんか堪らない感じがする。

ただ、パイロットやダイバーなど特殊な隊員のみ、腕時計が支給される実例もあったことも判明した。

ちなみに自衛隊の中のお店(PX)でも、G-SHOCKがずらっと並んでいる場合が多い。売れるんだねぇ。

そもそも官給品の管理が厳しい自衛隊で腕時計を官給品として支給するならば、紛失や横流し防止はもとより、よほどまともな時計を支給しないと訓練のたびに壊れ、隊員泣かせになるのではないだろうか。Navy SEALsのようにカシオが正式支給品となれば言うこと無しだろう。バックライト・ボタン押すと認識番号が浮かび上がる、なんちゃって。

余談だが、元隊員は「平時は1個でもいいが、国際貢献などで海外に行くのなら2個持つのが当然」と言う。

というわけで、隊員は任務に応じた機能を持つ腕時計を自分の好みで選んで着用できるが、どうしても耐久性や信頼性に勝るG-SHOCKが多くなるというわけだ。