海上における外国船などに対して行われる保安上の立ち入り検査を臨検という。わが国においては通常、船舶への臨検実施は捜査機関が主体であり、海上自衛隊では「有事以外の船舶への立ち入り検査」、いわゆる諸外国の海軍が日常的に一般船舶に対して行う「臨検」を想定していなかったのだ。
しかし、1999年にいわゆる工作船事件が発生したことで周辺事態法が成立し、海上自衛隊も”必要であれば”、平時での一般船舶への臨検実施が認められた。
護衛艦ごとに編成され「臨検」を目的とした「護衛艦付き立入検査隊」とは
この臨検を想定した海上自衛隊の専従部隊が、護衛艦ごとに編成された「護衛艦付き立入検査隊(Maritime Interception Team:MIT)」だ。1999年に発生した不審船事件に端を発する周辺事態法の成立によって、新編された”臨検専門部隊”なのだ。
護衛艦付き立入検査隊はCQB(閉所戦闘)のといった高度な専門訓練を受けた隊員で構成され、海自の中でも精鋭無比だ。
中には立入検査隊を特別警備隊と間違って写真を紹介しているブログもあるが、一度しか公開されたことがない特殊部隊である特別警備隊に比べると、訓練や各種装備品が公開される機会は比較的多く、その検証は比較的容易だ。報道によれば、小火器はミネベア製9mm拳銃(P220)、性能とは裏腹に閉所でも取り回しやすい9mm機関拳銃などを配備している。
[amazonjs asin="B0747KHYFM" locale="JP" title="Strike And Tactical (ストライクアンドタクティカルマガジン) 2017年 9月号 雑誌"]
立入検査隊員は濃紺に近い「立入検査服」を着用し、同じく濃紺の88式鉄帽やスポーツ用ヘルメット、防弾チョッキを着用しており、海上保安庁の特殊部隊SSTと似たスタイルだ。
特異なのが、部隊の性質から来る非致死性の装備品だ。やはり、臨検という法執行の側面からか、伸縮式特殊警棒ジストスや手錠など、警察官と同等の法執行装具をも携行しているのが特徴となっている。
また、隊員が素顔を晒していることも特別警備隊、さらには陸自の特殊作戦群と異なっており、明らかに特殊部隊とは異なると捉えるべきだろう。
参考文献 自衛隊の仕事全ガイド 隊員たちの24時間: Welfare Magazine総集編
このように護衛艦付き立入検査隊は特殊部隊の位置づけになっておらず、あくまで船舶に移乗して検査を行うための臨検専従部隊であり、急襲して無力化するような部隊ではない。
このため、さらなる危険性が想定される船舶臨検の必要があれば、戦闘スキルのさらに高い特別警備隊による強襲制圧後に護衛艦付き立入検査隊を移乗させ、臨検を行う手はずとしている。