なぜ9mm機関けん銃の評価は分かれるのか?

一部評論家に「使い勝手の悪いギャング向けの銃」とさえ言わしめた『9mm機関けん銃』は究極の駄作か、それとも……?

9mm機関けん銃は1999年から3自衛隊に配備されているミネベアミツミ製の国産短機関銃。一丁当たりの調達価格は付属品を含めて約40万円。

制式名称は「機関けん銃」だが、諸外国の短機関銃と同等品。愛称は公募でつけられた「エムナイン」。

陸上自衛隊では機甲科、第1空挺団、第12旅団など、航空自衛隊では基地警備隊、海上自衛隊では艦艇搭載の個人用火器、さらに臨検部隊の立入検査隊に配備されている。

護衛艦付き立入検査隊と海自の行う臨検任務とは?

また、特殊部隊である特別警備隊にも配備されたとされるが、扱い難さから、より高性能のMP5短機関銃に更新された可能性が指摘されている。

海上自衛隊特殊部隊『特別警備隊』の装備と部隊概要

有効射程距離はおよそ25メートル。全長339mm。重量は約3キロ。25発装てんの箱型グリップマガジン、銃の前方下面に突き出たレシーバーを介してフォアグリップを備えるが、ストックは搭載せず、射撃時はスリングで体に固定する。

短機関銃(サブマシンガン/SMG)としては国際的に標準的な9mm口径だが、機構はセミ/フル切り替え式のオープンボルト撃発式となっており、1966年に製造され、クローズドボルト撃発機構で命中精度が高く、世界的に成功したドイツH&K社のMP5に比較すると、運用での応用の幅は狭いだろう。

ただし、サブマシンガン本来の運用構想的にはMP5のように『狙って撃つ』戦略こそが後発で『狙いを定めずに瞬間的に弾幕を張る』使用方法が正しい。PUBGで家屋内に敵を誘い込んで二階の死角から一気にKRISS Vectorでヴヴォォォォォォってヤってくる小松さんいるじゃん。階段に敵のクレートが5,6個転がってる異様な光景。それお前じゃん卑怯者。なんだ俺か。小松さん金返して。

9mm機関けん銃の外見的な特徴は誰が見ても明らかであるようにアメリカ製のイングラム、イスラエル製のマイクロUZIを模倣しているが、9mm機関けん銃の製造元がガンビズ専門の弁護士から訴訟を起こされたという報道もないため、とくに問題はないものと見られている。銃の模倣を巡ってはグロック社が『SIGMA』製造元のS&W社を告訴し、S&W社では製造を打ち切るなどの対応がとられた事例もある。

なお、9mm機関けん銃にダットサイトやサイレンサーが装備された写真が公表されたことは無いため、現状ではアクセサリー類が用意されている可能性は低い。

ただし、フォアグリップはレール式着脱可能タイプであり、ライトやレーザーサイトを組み込んだ兼用フォアグリップにするのは容易のはずだ。フォアグリップが着脱可能である事実は、開発設計段階である程度のアクセサリーの用意が考慮されていたことを伺わせるだろう。

航空自衛隊基地等の警備を担う『基地警備隊』および『基地警備教導隊』とは

“折り曲げ銃床式の89式の方がはるかにマシなんだぞ”との評価も

当時の防衛庁では『戦車乗員や指揮官の自衛用』として開発を計画した9mm機関けん銃。日本警察では2002年に特殊部隊SATの訓練動画が公開された際にMP5の配備を公表したが、それ以前から大阪府警等の特殊部隊で少数のMP5が試験配備されていたことをうかがわせる元警察官の著書の記述などを勘案すると、わざわざMP5の輸入またはライセンス生産を蹴って、自衛隊専用の短機関銃を日本で自主開発する必要があったのか疑問だ。

MP5と開発思想が違うと言ってしまえばそれまでだが、90年代に開発されたことを考えると、当時からすでに世界の潮流からはずれている装備品ではなかったか。

海自特別警備隊でも、外国軍のアドバイザーからの助言により、早々に諸外国で主流の高性能サブマシンガンMP5を導入したと言われている。

実際、9mm機関けん銃の評価は高くないという意見も散見される。『むしろ89式の折り曲げ銃床式のほうがマシである』という隊員の意見が元自衛官の著書『そこが変だよ自衛隊!』などに掲載されている。また、戦車乗員に配備される半世紀前のグリースガンが結局は9mm機関けん銃ではなく、89式小銃折り曲げ銃床式となった事実はどう評価すべきだろう。

軍事ジャーナリストの清谷信一氏も著書「防衛破綻」において、9mm機関けん銃に懐疑的な見方を示している。

「機関けん銃は「マイクロUZIの劣化コピーで、使い勝手の悪いギャング向けの銃。切り札である第1空挺に玩具とは」

典拠元 清谷信一著「防衛破綻」より

このように、9mm機関けん銃の部内外からの評価は決して高いものとは言えないのが実情のようだ。

9mm機関けん銃の配備は打ち切りなのか

当初は全国の陸自部隊の指揮官や戦車乗員の個人防衛火器として配備される予定とされていたが、現場からの評価が芳しくなかったのか、計画は変更され、第1空挺団など一部部隊に配備されたのち、配備計画は終了となった。”不具合が確認された”ことを理由として陸自では新たな配備が打ち切られたのだ。ただし、海自の立入検査隊や空自の基地警備隊では今も9mm機関けん銃の調達は行われているようだ。

このため、すでに西方重視となった日本の防衛では北海道警備がおろそかにされ、北部方面隊などでは行き渡らなかった(コレは逆に隊員には喜ばしーことだったりして)。

ただ、全国の海自および空自基地では警備用火器として比較的ポピュラーに配備されている。

なお、余談だが「女性自衛官が9mm機関けん銃を持つことは実際ない」と、自衛隊地本加茂地域事務所長が、同公式ページ内に設けられた趣味の自作フィギュア(女性自衛官)制作のページにて以前言及されていた。