陸上自衛隊の『一部』で配備されるM4に関する「ある事件」とは?

M4カービンは米軍の現行小銃であり、原型は米軍で最も成功した旧制式小銃M16A2だ。

それまでのM16A2より全長を短くし、軽量化したモデルで、車両搭乗時における利便性等を向上させている。

現在、我が国では陸上自衛隊のみが、米国防総省の対外有償軍事援助(FMS)にて、M203グレネードランチャー、QDSS-NT4サイレンサーなどとセットで米国政府から正式に購入し、特殊作戦群にて配備している可能性が極めて高いとされている。

U.S. Air Force Staff Sgt. Julius Taylor, a combat arms training and maintenance instructor with the 628th Security Forces Squadron, disassembles an M4 carbine July 30, 2013, at Joint Base Charleston, S.C. SrA Dennis Sloan

不正規戦に対応する陸上自衛隊特殊作戦群とは

ただし、2022年10月には防衛省が創設以来初となる特殊作戦群の訓練画像公開に踏み切ったが、訓練実施国であるオーストラリア側が公開した画像の中にて特殊作戦群の隊員たちがHK416系小銃を所持していることが明らかになっている。

【史上初】特殊作戦群の実働訓練画像を防衛省の正式公表前からオーストラリア軍側が公開→削除してSNSでは物議。その背景には何が?

 

自衛隊とM4カービン配備が公になった経緯とは?

自衛隊において外国軍の配備する銃器を代理店である民間企業経由で取得することは研究開発に必要であることから特異なことではないが、部隊への実験または試験配備となれば、極めて稀と言えよう。

2022年現在、防衛省/自衛隊ではM4の配備を公式に一切認めていないものの、下記の複数のオープンソースからその概要を掴むことができる。

1、米国政府が対外有償軍事援助で日本政府へM4を売却した事実を公表

2、米陸軍軍人が個人的に親しい自衛隊員にM4用照準器を不正輸出した事件によるもの

2は取り様によっては防衛不祥事にすらつながりかねないが、当事者が出した声明文の中に『M4』の名称がある以上、本件を無視することはできない。

元・米軍将校であった飯柴智亮氏と自衛隊との関係

元・米陸軍大尉(情報将校)であった飯柴智亮氏と言えば、アフガニスタンへの従軍経歴などを持つ米軍兵として国内専門誌でも頻繁に登場したことで以前から名前が知られているが、同氏が輸出規制対象の小銃用部品を日本に密輸出した疑いで起訴された経緯および同件に関する同氏の「声明文」は大変ショッキングであった。

なぜなら、この”輸出”自体が『自衛隊におけるM4の配備』を起因とするものだからだ。

詳しくは飯柴大尉の声明文を参照のこと。 http://spikemilrev.com/news/2008/7/29-3.html

米陸軍大尉であった飯柴智亮氏は2006年、親しい自衛隊員から個人的に頼まれ、輸出に米国政府の許可を要する軍用光学照準器(EOTech 553)などを無許可で日本に輸出した。

ところが、これが武器の密輸出にあたるとして米国の捜査当局から起訴されたのだ。

EoTech 553タイプ ホロサイド BK RD-0015

飯柴氏にEOTech 553の輸出を頼んだ自衛隊関係者は『特殊作戦群でM4を新しく配備したので、同銃に取り付ける光学照準器が欲しい』と頼んだという。

後に親しくなった自衛官の一人から電話による連絡がありました。内容は『陸自内に新設された特殊作戦群が、新たに購入した米国コルト社製M4カービン小銃に取り付ける光学サイトの購入を検討、結果米国製EOTech 553が選ばれた。』というものでした。

出典 飯柴大尉の声明文 http://spikemilrev.com/news/2008/7/29-3.html

その後、2008年に飯柴氏はシアトル連邦地裁で起訴され、罪を認め、禁固1年と1日の実刑を言い渡された。

日系米軍大尉に禁固刑 日本に軍用品不正輸出

米国から日本に軍用品を不正に輸出したとして、密輸の共謀罪で訴追された日本出身
の米陸軍大尉、飯柴智亮被告(35)に、シアトル連邦地裁は7日、禁固1年と1日の
実刑を言い渡した。飯柴被告は不正の事実を認め、検察側と司法取引していた。

飯柴被告は判決言い渡し前に「愚かな過ちを悔いている」と謝罪した。

ワシントン州フォートルイス陸軍基地の情報部門に所属していた飯柴被告は2006年
から今年2月にかけ、別の人物と共謀。銃器に付ける照準器60個などを許可なく日本に
輸出したとして7月に訴追された。

検察側は、輸出先が日本の自衛隊関係者や防衛商社、友人だったと指摘していた。

飯柴被告は渡米後に米国籍を取得。1999年に陸軍に入隊し、アフガニスタンでタリバン
掃討作戦に参加した経験を基にした著書や、兵器の解説書を出版している。訴追を受け
情報部門から外された。

出典 http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008110801000157.html

このような経緯でM4の配備が思わぬ形で明らかになったが、飯柴氏の「声明」を自衛隊では否定している。

第82空挺師団の日本人少尉

したがって、自衛隊側としては特殊作戦群でのM4配備を認めたくない思惑がありそうだ。

また、国が認めてしまえば、同時に米国検察当局側が指摘する『防衛商社』への不正輸出も明らかとなるため、思わぬ『飛び火』となる可能性も。

1988年に”自衛隊当局と武器輸出・開発を巡る総合商社のキャリアウーマンの関係”を扱ったテレビアニメがあったが、”防衛産業の光と影”というものはいつの時代も変わらないものである。

自衛隊に配備された小火器各種