【史上初】特殊作戦群の実働訓練画像を防衛省の正式公表前からオーストラリア軍側が公開→削除してSNSでは物議。その背景には何が?

タイトル画像の引用元 陸上自衛隊公式Twitter

2022年8月に行われたオーストラリア陸軍特殊部隊『特殊作戦コマンド』と日本の陸上自衛隊特殊部隊『特殊作戦群』との合同訓練『令和4年度日豪実動訓練』の模様を今月6日、防衛省が公表した。

特殊作戦群が編成されて2022年で18年となるが、同部隊の訓練が公開されるのは史上初。

令和4年度日豪実動訓練における日本側の参加部隊は『陸上自衛隊特殊作戦群』のみ。つまり、同部隊のための実働訓練だ。訓練目的(成果)は以下の通り。

陸上自衛隊特殊作戦群は、豪陸軍特殊作戦コマンドと実動訓練を実施し、作戦遂行能力を向上させるとともに、インド太平洋地域における「特別な戦略的パートナー」である豪州との一層の連携強化に寄与

出典 陸上自衛隊公式 ニュースリリース https://www.mod.go.jp/gsdf/news/press/2022/pdf/20221006.pdf

すなわち、アジア地域で勢いを増す中国の覇権主義を牽制すべく、日本がオーストラリアとの連携を強化するのが目的である。

また、本年7月に韓国国内ではカルト宗教として認知されている『統一教会』をめぐって、奈良県内で暗殺された安倍元首相への餞(はなむけ)とも捉えられるのではないか。

というのも、安倍氏は過去、総理大臣としては初となる特殊作戦群への視察を敢行した実績があるのだ。

2018年、当時の安倍首相がオーストラリアのターンブル首相(当時)と共に特殊作戦群を視察した際の様子。背後の車両は陸自で新たに導入されたオーストラリア製の輸送防護車。日本と豪州は防衛政策でビジョンを共有している。出典・在日本オーストラリア大使館公式サイト

なにしろ、その故・安倍元首相は特殊作戦群の訓練を実際に自身の目で見て、こう称賛したのだ。

総理として初めて視察した特殊作戦群は、その練度の高さに目を見張りました。事柄の性質上、これ以上の感想は差し控えなければならないのは大変残念なことでありまして、私が何に驚いて、何に感動したかということは、差し控えさせていただきたいと思います。

出典 故・安倍元首相の発言 首相官邸公式サイト https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201809/03jieitai_konshinkai.html

故・安倍元首相が見たのは、例の“標的と標的の間に隊員を立たせ・・・”なのか今となっては不明だが、同氏は特殊作戦群のどの部分に驚いて、何に感動したのか、ついに語ることなく凶弾に倒れ、この世を去った。

今回の”18年目にして史上初”となる公開は故・安倍元首相への餞(はなむけ)と考察するのは筆者だけだろうか。

当サイトにおいても、特殊作戦群については以前から紹介しているが、同部隊は陸上自衛隊の中で最も秘匿性の高い特殊部隊であることから、これまでその訓練の様子ならびに配備される装備品等は公にならず、装備はこれまで納入に係る公文書等から推測せざるを得なかった。

不正規戦に対応する陸上自衛隊特殊作戦群とは

 

今回、防衛省側ではオーストラリア政府と調整の上で公表に踏み切ったとしているが、防衛省の公式アカウントで正式に公開された”実働訓練”での写真は2枚のみ。一枚は意見交換会のような場面、そしてもう一枚はやや不鮮明な想定中の一コマである。

陸上自衛隊が公式ツイッターアカウントで公開した特殊作戦群による訓練の様子。おそらく薄暗い室内のため、デジタルカメラの感度設定を上げて撮影したのか、意図的に画質を粗くしたのか(!?)不鮮明だが、小銃に取り付けられたフラッシュライトの明かりを頼りに隊員が室内を索敵している様子が確認できる。頭部のナイトビジョンにも留意。  画像の引用元 陸上自衛隊公式Twitter

これでは彼ら特戦群隊員がどのような装備を使用しているのかわからない。少なくとも、特殊作戦群に興味を持つ人々が望むような写真ではなかったのではないか。だが、防衛省としてはこれが公開できるギリギリのラインだったのだろう。

だが、実は今回、防衛省が正式に特殊作戦群の画像を公開したことを巡って、ある一つの騒動がSNSを中心に広がっている。防衛省が公式発表に踏み切る前の段階で”画像が流出”していたという指摘があるのだ。

というのも、今回防衛省が特殊作戦群の画像を正式にTwitterの公式アカウント上で発表したのは10月6日。ところが、先月27日の時点で、オーストラリア陸軍公式サイト(https://www.defence.gov.au/)上でも複数の”日本の部隊”の画像が確認できていたのである。同軍側は彼ら特殊作戦群を『マスクをつけたサムライ』と呼称していたが、それらの画像は少なくとも日本の防衛省が6日に正式公開するまでに削除されており、その理由は明らかになっていない。

この経緯を巡って、多くの人々が『オーストラリア側が出したから防衛省側も出さざるを得なくなったのでは』と指摘する事態に。

しかし、これらの指摘が事実なら、防衛省は成り行きで仕方なく出した・・・という、不名誉な事態となるのだが。なお、10月8日になり、夕刊フジがこの件を報じているが、それによれば『両国は公表にあたり、運用能力や隊員個人が特定される情報を除くことで合意した』とある。

では、オーストラリア側が一度は公開しながら削除した画像には何が写っていたか。薄暗い建物内で小銃を構える陸上自衛隊迷彩服を着用した人物の構図は防衛省公表の画像と似ているが、同省側の写真よりも鮮明に装備品の詳細がわかるものだった。

当サイトではそれらの写真の直接引用は控えるが、写真に拠れば、特殊作戦群隊員は4眼仕様のナイトビジョン『GPNVG-18』を装着しているほか、各種アクセサリーの搭載されたM4系またはHK416A5とみられる小銃を携行しているようだ。

DOUBLE BELL HK416 GEISSELEタイプ 10.5inch SMRハンドガード メタル電動ガン ブラック M4 M16 No.811

画像は遊戯銃

また、いわゆる『戦闘服市街地用』なのだろうか、日本政府旗章を着けたブラックの戦闘服を着用し前進する自衛隊員の様子もあった。戦闘服の上から着けた装備はオーストラリア軍迷彩であることから現地で借り受けたものだろうか。

当サイトでは以前から特殊作戦群がM4小銃を使用していることを推測する記事を掲載しているが、これらの装備の様子からは洗練された先進国の特殊部隊と同じ水準にあると捉えることができる。

陸上自衛隊の『一部』で配備されるM4に関する「ある事件」とは?

しかし、なぜあのように詳細な装備が識別できるほどの画像をオーストラリア側が掲載してしまったのか。

余談だが、日本ではこのような騒動(!?)は警察庁でも起きており、奇しくもオーストラリアへ訓練に出かけた特殊急襲部隊SATの訓練がオーストラリア・クイーンズランドの現地警察の公式サイト上で、“自衛隊の迷彩服を着用し、MP5を構えるSAT隊員”の姿が“公開”された事例もある。“SATに自衛隊迷彩服が配備されている”という情報は以前から知られてはいるものの、その実際の姿を国内で公開したことはなく、さぞや焦ったのではないだろうか。国民へ情報を秘匿するのが軍事や公安組織の常識とは言え『見せて良い部分は積極的に見せて抑止とする』という普遍的な考えの西欧の治安政策と、徹底した秘密主義に走る日本との違いが出た事例と言える。ただし、警察庁では2002年のサッカーワールドカップ以後、テロ対策の一環としてSATの訓練動画を定期的に公開しており、現在に至るまで”正式発表された情報量”は多く、特殊作戦群とは比べ物にならない。

いずれにせよ、防衛省の正式発表前からオーストラリア軍公式サイトが公然と掲載していた特殊作戦群の一連の画像については現在までに全て削除されている。

その理由については、前述の”文化の違いによる政策の違い”が招いた歯車のズレ、すなわち防衛省から装備品等の様子が詳細すぎるとの懸念を伝えられたためなのか、はたまた日本のミリタリーファン”からの反響の大きさ(アクセス数)に同軍が驚いて削除したのか、詳細は判然としない。

一方、今回の騒動における防衛省側の姿勢は『必要な分は見せたということだ。これ以上は見せぬ』とでも言いたげだ。もしや、“一般の自衛隊員が使っていない銃”を公表してしまえば、国民の目に必要以上にセンセーショナルに映るのではないか、と懸念しているのだろうか。もしそうであれば、これは単に”手の内を明かさない政策”のみならず、国民感情を配慮した政策の一環とも言えるのではないか。

その防衛省側の思惑に見え隠れするのは、高性能な武器を配備した精強な特殊部隊を保有する“戦える日本国”になることを望まない人たちの存在だ。しかし、彼らが望もうと望まざるとも、テロに対する脅威は年々高まりつつある中で、対抗手段が自衛隊にないのでは国民の安全は保たれない。

いずれにせよ、今回の画像公表における騒動の原因が、もし“防衛省側の懸念”であれば、今後も同省は特殊作戦群をめぐる情報戦において、どこの国の特殊部隊より厳格に“手の内を明かさない政策”を続けると読んでいいのかもしれない。

一方、メディアで描かれる自衛隊特殊部隊がそれぞれの世代に与えるイメージはどうだろう。シニア世代には“自衛隊の非公然特殊工作隊が元隊員の主人公を始末する”様子が描かれる『野性の証明』、ミドル世代には“日本の国益のために世界各国で秘密裏に戦う元自衛官による不正規専門自衛隊特殊部隊 ”が描かれる『オメガ7』、それ以下の若い世代には自衛隊が取材協力に応じ、特殊作戦群がそのものズバリ描かれ、自衛官募集ポスターでも公式コラボした『ゲート』が、それぞれ自衛隊特殊部隊のイメージを抱かせているのかもしれない。

しかし、防衛省はいまだに『自衛隊特殊部隊』は、日本国民にとってセンシティブな存在であると考え、国民世論を恐れているのかもしれない。それは深読みが過ぎる上に小松さん、金返してよ。小林源文先生、今回も本当にすみませんでした……。

なお、すでにSNSにおいては一連の“オーストラリア側の画像”が出回ってしまっているほか、10月8日現在『wikipedia』の特殊作戦群の項目にも、しっかりとこれらの画像が添付されており、今まで文字情報が主で“編成式典”の画像くらいの地味だった特殊作戦群のwikipediaが一気に“華やか”になってしまったようだ。

ストライサンド効果の法則(消すと増える法則)も相まって、防衛省側の政策とは裏腹に、悪意のないミリタリーファンの人々によって『オーストラリア国防省が公式に出した画像を出典明示のうえで引用しただけ』という天下御免の理屈で今後も拡散され続けると見られ、陸上自衛隊にとっては先ごろのセクハラ問題同様、頭を抱えそうだ。“連携強化”のはずが、とんだ憶測をSNS上で呼び起こし、物議を醸した今回の日本とオーストラリアの実働訓練。

くどいが、こんな深読みのごとき考察をしているのは筆者だけだろうか。

いずれせによ、特殊作戦群は陸上自衛隊の切り札。防衛省にはここぞという場面で躊躇うことなく、カードを切ってほしいものだが。