警務隊が官品横流しに目を光らせている

警務隊および警務官は自衛隊における秩序維持と犯罪の捜査、要人警護、道路交通統制等を実施する警務科職種。いわゆる諸外国軍の憲兵および憲兵隊に相当し、防衛大臣直轄部隊として陸海空各部隊ごとに編制されている。

司法警察職員と特別司法警察職員とは

警務隊では主に、部内で起きる暴力事件や窃盗などの犯罪を捜査、立件するのが任務となるが、隊員による官給品横領等の捜査も行っている。

一般にこのような犯罪の捜査を実施するにあたり、当然その実施組織ならびに職員には、その根拠となる極めて強力な権限が必要となる。我が国ではその作用を司法警察と規定し、その権限を有する者を司法警察職員と呼ぶ。一次捜査機関たる都道府県警察の警察官は一般司法警察職員(階級により司法警察員または司法巡査)と呼ばれ、その代表格である。

警務官は特別司法警察職員

一方、自衛隊の警務官は警察官ではないので一般司法警察職員ではないが、特別司法警察職員という身分が与えられている。

この特別司法警察職員も、司法警察員と司法巡査の二つに分けられる。両者は付与された権限に違いがあり、司法警察員が上位である。3自衛隊の各警務官は三曹以上の警務官が司法警察員、士の隊員が司法巡査の身分となる。

隊員が国から貸与されている官品の装備をネットオークション等で販売することは横領の罪にあたるため、警務隊の出番となる。司法警察権を行使し、オークション事業者から出品者の個人情報を入手の上で捜査を行う。


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第302保安警務中隊と特別儀仗隊とは?

規律の正しさから儀仗兵としても活躍する警務官

国賓に対して「儀仗」を行うのも第302保安警務中隊の特別儀仗隊だ。

世界各国の軍隊では儀仗部隊が編制されており、国賓への心からの厳粛な儀仗は万国共通の『おもてなし』だ。

我が国も国賓を迎える際は空港などで儀仗を行うが、その国家的儀礼を担っている栄誉ある部隊が東京の市ヶ谷駐屯地に置かれている陸上自衛隊第302保安警務中隊内に編成された「特別儀仗隊」だ。

この部隊は陸上自衛隊に1955年(昭和30年)に編制された第302保安中隊(現在の第302保安警務中隊)の隊員をもって構成される部隊であり、国賓が来日した際には赤坂迎賓館または羽田空港で栄誉礼を行うほか、防衛大臣の就任時や観閲式にも儀仗を行う。

言うなれば、陸自の特別儀仗隊は日本の顔。式典における儀仗は重要な国家行事であり、要人や国賓らを前にした儀仗時における彼らの動作には一切のミスが許されない。規律の正しさから儀仗兵としても活躍する警務官だからこそ与えられた任務だ。

警務と名がつく通り、普段は自衛隊内部の規律を維持する警務官としての任務を遂行する一方で、特別儀仗という任務も課せられているのだ。

また、見栄えが優先される儀礼という理由から、精悍な日本男児の顔つきおよび、均一性を保つ目的から、身長も170~180センチでなければ任用されない。規律の正しさ、さらに身長や顔つきといった身体的優位も考慮されるのだ。

参考書籍 『国防の真実 こんなに強い自衛隊』

警務官の制服と装備品

警務官は3自衛隊それぞれの制服を着用し、警務腕章を付け白いヘルメットを被るが、迷彩服を着用する場合もある。自衛隊施設以外での行動確認や内偵捜査の場合では私服も着用する。

警務官の装備品

警務官は”自衛隊の中の警察官”だから、その装備品も警察官の装備品と似る。警務官の主な装備品は金属製伸縮式特殊警棒『ジストス』または木製警棒、警務手帳、9mm拳銃および予備弾倉、手錠、捕縄、警務腕章、警笛。

かつて警務隊では小型リボルバーのコルト・ディテクティブスペシャルを配備していたが、80年代に全て退役。現在は3自衛隊で制式配備されている9mm拳銃となる。小型リボルバーであるM37やサクラを携帯する都道府県警察官と比べると、ホルスターが目立つのが特徴だ。

都道府県警察では3種類の回転式および、2種類の自動式けん銃が主流

 

また、警務官の警務手帳は都道府県警察官の警察手帳に準ずる装備品で、警察手帳と似た縦開きのバッジホルダー式になっており、中身は身分証明書とバッジ部分の『き章』が収まっている。き章には中央に旭日章、さらに英語で「POLICE」「JUDICIAL」「OFFICIAL」の表記と、日本語で「司法警察職員」および「防衛省」と併記される。

かつての旧軍には営倉があったが自衛隊には?

3自衛隊には警察(警務隊)はあっても、留置所のような収監施設はない。したがって、逮捕した被疑者を拘置する場合、地元警察署や法務省に協力を要請のうえで、留置場や拘置所を臨時に借りる。

米軍では憲兵隊とは別に文民捜査官も所属し、軍内部の犯罪取締りを行う

米軍の憲兵隊、Military police(MP)では、軍人である憲兵とは別に、文民の捜査官も所属する。両者は共同で軍内部の犯罪取り締まりにあたっている。ドラマにもなっているのでご存知の方もいると思うが、これがいわゆる有名な、非軍人の文民捜査官が主体の海軍犯罪捜査局(Naval Criminal Investigative Service、略称:NCIS)だ。同局に所属する彼らはFBIの特別捜査官(Special Agent)と同様に、全州にわたって権限を行使できる。

警務隊は「警察」なのでもちろんパトカーや覆面パトカーを配備

自衛隊の警務隊も緊急車両指定されたパトカーを配備する。73式小型トラックのパトカー、航空自衛隊では警察の白黒パトカーのようにバータイプのパトライトを装備したバン型のパトカーも配備されている。また、陸上自衛隊のみ、白バイも配備されている。これら警務隊の車両では車体の塗色が白色となるのが特徴だ。

さらに、内偵捜査に必要であるため、いわゆる覆面パトカーも配備されている。覆面パトカーの車種は日産グロリア、ブルーバードシルフィ、プリメーラ、トヨタ・クラウン(年式の古い車両が多い)など。警察の捜査用覆面のようにフロントには前面警光灯および助手席バイザーにはLED補助警光灯(フラットビーム)もついているが、塗色は白色以外にもあり、黒塗りのスカイライン350GTなど高排気量の高級セダンを覆面パトカーとして配備している。

陸海空それぞれの警務隊は自衛隊内部において、これらの緊急車両を駆使し、日夜、司法警察活動を遂行している。ただし、交通統制は行っても、交通違反の取り締まりは行わない。

とはいえ、実際は所在不明自衛官、いわゆる脱柵者の捜索が日常的な任務となっている。

自衛隊から逃げ出す『脱柵』とは?

警務官指定への道

陸上自衛隊と海上自衛隊では自衛隊へ入隊した直後には警務官に任用されない。教育を終え、部隊勤務の経験を積んだのち、警務官への任用を希望する者は警務隊の行う面接を受ける必要がある。一方、航空自衛隊のみ自衛隊入隊後、直接警務隊へ配属される場合もある。

警務官に任用されると、陸上自衛隊小平学校にて、3自衛隊の幹部、曹士それぞれの警務官が警務科の教育を受ける。

自衛官であり司法警察職員でもある警務官。定年も60歳でほかの職種より7年ほど長く自衛隊に勤務できる。儀仗兵としても活躍できるとあれば、とくに陸上自衛隊の警務科の人気が高いことは想像に難くない。

参考文献 : 「自衛隊の仕事全ガイド 隊員たちの24時間」 原書房


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