自衛隊の漫画とアニメ各種

不条理な日常コメディから戦記物まで

自衛隊を主題とした漫画をご紹介いたします。レビューは筆者の独断と偏見になります。

右向け左!

右向け左!(1) (KCデラックス)

4063723801 | すぎむら しんいち | 講談社 |  2007-10-23

原作の史村翔は自衛隊の内情を知り尽くした元隊員で少年自衛官上がり。それにギャグとシリアスに定評のある、すぎむらしんいちが作画を担当。1989年から1991年まで連載された作品だが、描かれる陸上自衛隊の営内生活がリアル過ぎて笑えない・・という現職隊員が続出したという作品。


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角刈り班長、インキン地獄の営内生活、いじめの仕返しに64式で自作実包発砲、民間人のサバゲーマーに森の中で襲撃される自衛隊・・・などなど有川浩には描けない世界が過去そこに。

今の感覚なら「なんでこんな奴が自衛官に合格できるんだ?」って思えるほどの主人公・坂田だが、実際、元自衛官の大宮ひろ志氏は著書の中で「昔は自衛官採用試験で試験官が答え教えてた」って書いてるから、坂田2士みたいな自衛官はバブル時代に多数いたのかもしれない。

主人公は敢えて言うなら、新隊員の坂田、そして彼をはじめとする教育隊の班長で昇進に意欲を燃やす山口3曹の二人でしょう。

ニート気質で楽天家の坂田は訓練に手を抜き、美人女性自衛官に手を出すなど数々の服務事故を起こすやりたい放題の問題児。それに手を焼き、2曹昇進をフイにされる山口3曹。

ちなみに山口3曹は中卒で工場勤務をしていたが、親に数万円で、ぴんから兄弟に似た自衛隊広報官に売られたという。山口は自分の2曹昇任の足を引っ張る存在である坂田を自衛隊から早く厄介払いしてしまおうと画策するが、一方で坂田をはじめとする自分の班員たちがピンチとなれば守ってやる上官らしさを時折見せるなど、王道の憎い演出にはニヤリとしてしまう。

ある意味、今のように自衛隊がチヤホヤされた時代と違い、バブル時代、「自衛隊に入るやつは落ちこぼれ」とヘイティされた時代の自衛隊の内情を描いた作品というだけでも価値がある。バブル時代の若者、つまり今のオヤジたちの多くは自衛隊というか、公務員に全く興味を示さなかった。刑事ドラマは人気だったのにねえ・・。

主人公の坂田などは何も考えず借金返済のため成り行きで自衛隊に入っているし、彼らを見ると「落ちこぼれ」というイメージもある。今でいうブラック企業に使い捨てにされた就職失敗型のニートたちの最後の砦が自衛隊だったかもしれない。それを打ち消すように自衛隊の中の落ちこぼれである30歳近い万年士長に「自衛隊は落ちこぼれの救済施設じゃねえ!」と叫ばせるなど、皮肉が面白い。

子持ちや、銃が撃ちたくて警察の試験に落ちて自衛隊に入ってきたやつ、元相撲部屋・・・そういった一癖ありそうないろんな同期たちが描かれる。

中でも三輪という隊員の志願動機はなかなかツボだ。子供時代の三輪はある日、山で昆虫採集をしていた。その最中、ふいに地雷をした彼であったが、ほっとしたのもつかの間。尻を拭く紙がないことに気づき、パンツをおろしたまま、山の中で泣き叫んでいた。そんな彼に「葉っぱの尻拭き紙」を差し出して救ったげたのは、顔面をドーランで偽装し、国防色の服を着て64式小銃を背負った男だった。そして緑のおじさんはヘビを食いながら去って行った・・・・・・。三輪が将来、陸上自衛隊へ入隊しレンジャーを志願するキッカケとなった強烈な体験だったのである。

とまあ、いろんな隊員たちの女日照りの日々と、かゆくて臭~いインキン地獄を描いており、現役自衛官から見れば非常にリアルな作品と評価されているという。ちなみに当サイトは現職から不評です。臭~い。

余談だが、1960年代、60年安保直後で人手不足となっていた当時の自衛隊には当然のごとく、若い志願者は集まらなかったという。その中であっても、「銃が撃ちたいから」と志願してきた少年ライフル魔は不合格だったという。あの当時でも自衛隊落ちる奴がいたんですね。

というか、しっかり落としていたようで、自衛隊も一線は超えていなかったんだなと。

それにしても、連載当時は制服がまだ91式以前の70式の時代だったので、なんだか制服姿の女性自衛官がミアコスのコスプレみたいに見えます。あ、婦人自衛官と呼ばれていた時代でしたね。

最近、自衛隊を退職後の主人公らを描いた続編が出ました。


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