国を護る者たちが着用する被服。自衛官の制服は諸外国の軍人に支給される制服と比較してもそん色なく、威厳に満ちたデザインとなっています。制服はとりわけ着用する者の士気を高揚させ、任務にまい進させる役割も担うため、道路工事の棒振り警備員のような制服を着用させられては、上がる士気もだだ下がり。
防衛省に所属する全職員を「自衛隊員」と呼びますが、制服が支給されるのは戦闘員である自衛官、それに自衛隊員である防衛大学校生や高等工科学校生徒のみ。
自衛官の制服は陸海空それぞれで色と意匠が異なるほか、礼装や音楽隊専用の制服も別に用意されており、演奏服装と呼ばれるものは著名な服飾デザイナー・三宅一生氏によりデザインされています。ほかにも、妊娠中の女性自衛官には自衛隊制式のマタニティ制服が貸与されています。
また、自衛隊の制服には階級によって特徴があり、准・幹部自衛官は貸与された官給品以外に、私物の制服も購入、着用が許されています。これは曹士隊員よりも制服を着用する機会が多い幹部隊員ゆえの措置だ。PXで販売されている制服は私物用です。
自衛官の恒常勤務においては、これら貸与された被服を着用することが定められています。ただし、部外で捜査中の警務隊員や、スパイ活動中の情報科職種の隊員など一部職種によっては必ずしも制服を恒常的に着用しません。
それでは陸海空の3自衛隊の制服について、簡略で解説していきましょう。
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陸上自衛隊の制服
陸上自衛隊では過去4回の制服のモデルチェンジを行っています。陸自発足当時は米軍から供与された生地を染め直し、紺色の58式冬服、明るいグレーのズボンとシャツを60式夏服として隊員に支給。70年には茶灰色を基本色とした70式制服の貸与を開始、91年に3度目のお色直しが行われ、若者のファッション感覚の変化に合わせ、なおかつ日本の美しい緑の国土をイメージしたOD(オリーブドラブ)を基調とした「91式制服」が制式化されています。
91式は本来OD色ですが、日差しが強い日に見ると灰色に見えます。
冬用はさらに濃いOD色。やや明るい緑色をしたこの「オリーブドラブ」は陸自の基本色。
そして91式制服以来、27年ぶりとなる2018年3月からは色や細部が変更された新制服・16式の貸与が開始されています。毎日新聞では一式で22万円としていますが、報道ジャーナリストの伊藤明弘氏によれば一式50万円としています。
甲武装
このスタイルは「甲武装」というスタイルの例で警衛時などに行います。陸上自衛隊の特殊部隊「特殊作戦群SFGp」では、甲武装で顔に覆面を被った隊員が編成式典に登場しています。
日本の特殊部隊 2017年 03 月号 [雑誌]: ストライクアンドタクティカルマガジン 別冊
B01N5XYKF6 | SATマガジン出版 | 2017-02-16
一方で「乙武装」がいわゆる迷彩服スタイルだ。
陸自儀仗隊制服が52年ぶりに改正。ネットでも話題
2017年3月30日、防衛省は特別儀仗を行う陸上自衛隊の警務科部隊、第302保安警務中隊および中央音楽隊の制服を52年ぶりに改め、4月上旬から新制服の着用を始めると発表した。
警務科については以下の項にて解説した。
新制服は著名デザイナーのコシノジュンコ氏が監修。制服の改定ポイントはネクタイとブレザーから詰襟に変更され、冬服がオリーブドラブから鮮やかなブルーに一新。カラーこそ違えど、デザインは楯の会の制服をほうふつとさせる。
一方、夏服は白地に赤のラインを入れて日の丸をイメージ。
当サイトでも紹介している通り、特別儀仗隊は国賓の来日時に第302保安警務中隊から臨時に編成され、特別儀じょうを行う部隊だ。
典拠元 時事ドットコムニュース(2017/03/30-19:13)
http://www.jiji.com/news/kiji_photos/0170330at82_p.jpg
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017033001135&g=soc
この新制服の発表を受け、写真を見た人々は
海兵隊のブルースーツを意識してんのか
アニメで見た
カラーガードの出番増やして欲しい
SFアニメの宇宙軍みたい(´・ω・`)
朝鮮っぽい
照明落としたホールなんかだと、これくらい明るい紺でないとならないんだよね
警備員かよ
ネット上のおまいら
こんなんで若い自衛官が集まると思ってるとしたら、市ケ谷も相当お目出度い。
やれ「かっこいい」だ「いまいち」だ「前のがいい」だ、なんだと言えるんだから平和な話だよ
ダサいんだけど…
「軍靴の臭いがあああ~~!!!」
民間にやらせると、意図的に軍事色を薄めようとするからダメだよ
(引用元 http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1490964607/)
とさまざま評しており、賛否両論があるようだ。
第302保安警務中隊では、体格の均整による統制美を第一にしているほか、キリッとした日本男児の顔つきをした男性隊員を選抜しているという。なお、特別儀仗隊には現在のところ女性自衛官は選抜されていない。
海上自衛隊の制服
海上自衛隊では男性海士と海曹以上の男女隊員で大きくその制服スタイルが異なる。男性海士はセーラーカラーなのだ。一方、女性海士および、曹と幹部の男女隊員には紺のブレザーが貸与されており、海自では階級の違いで制服にも大きな違いがある。以前までは男性幹部に幹部第1種夏服として灰色のブレザーが配備されていたが、現在は白いツメエリタイプに変更されている。
セーラー服は海軍の象徴ともいえるべき制服だが、海上自衛隊では男性海士のみ着用でき、女性海士は着用できない。
一方でアメリカ海軍やドイツ海軍では女性兵士もセーラー服が着用可能だ。海自の男性警務隊員で階級が士の者は、当然セーラー服を着用し、その上から拳銃やジストスをぶら下げたベルトを装着する。なお、海自の航空学生はセーラー服でもブレザーでもなく、紺のツメエリとなる。
航空自衛隊の制服
航空自衛隊では、昭和29年の発足に伴い、アメリカ空軍の制服を参考に制定された。その後、モデルチェンジを繰り返しながら長らく使用され、2008年の制服変更で明るいブルー色が控えめな濃紺に改められたほか、幹部の袖に飾線を付されるなど細かな改定が加わった。
空自隊員が被る略帽は米軍同様、ギャリソンキャップで俗にサンダーバード帽と呼ぶ。
自衛官以外の制服
自衛隊では自衛官以外の自衛隊員、つまり防衛大学校生や防衛医科大学校生、また高等工科学校生徒にそれぞれ制服が貸与されている。
防衛大では1992年に初めて女子の入学が許可されたが、当時制定された女子用制服は、冬用が4つボタンの紺色スーツ型上着とスカート、夏用はベージュ色のスーツ型上着とベージュ色のシャツという、オーソドックスな女性自衛官スタイルだった。長らく女子学生にはこの制服が貸与されたが、2003年に男子学生と同様のツメエリの上着となった。
参考文献 防衛大学校公式サイト「防大かわら版VOL.22 2011.10.27」
http://www.mod.go.jp/nda/obaradai/kawara/vol22/
一方、陸上自衛隊の付設機関である高等工科学校生徒の制服だが「少年工科学校」制度だったころは、生徒も正式な自衛官であったため、自衛官と類似したOD色でブレザータイプの制服であった。
しかし、自衛隊における総人件費削減の一環及び武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書に則り、改正された新たな生徒制度となり、非自衛官となり、現在は詰襟型の制服になった。なお、高等工科学校の生徒は男子のみである。
事務官、技官に制服は無い
事務官も自衛隊員だが、非戦闘員(文官)のため、自衛官のような制服はない。普段はもっぱら、スーツにワイシャツ、ネクタイでの勤務となる。現場などでは作業服のほか、ワイシャツの上からOD色のジャンパーを着用することもある。
ただし、自衛隊駐屯地や基地以外の自衛隊施設で守衛として警備を行う一部の事務官には、警備員のような制服が貸与されている。
勤務中に制服を着用しない自衛官
自衛隊では一部の職種において必要と認められる場合、制服の着用が免除される。例として広報官だ。多くの場合はスーツを着用し、ネクタイを締める。
さらに警務官のページでも言及しているが、自衛隊内部の司法警察職員である警務官が犯罪捜査の職務において張り込みや内偵など、必要と認められる場合に私服を着用する。
また、近年新設された情報科の自衛官も、必要に応じて制服着用が免除される。ちなみに陸上自衛隊特殊作戦群ではラーメン屋店員に仮装のうえで駐屯地へ堂々と侵入し、オカモチの中の発煙筒を発火させる”抜き打ちテロ訓練”を行っている。そんな岡持ちありえるのか。恐ろしい。
自衛隊の簡易服と略帽とは
自衛隊の服装規定に定められた着用品以外の制服を「簡易服」と呼ぶ。これは正式に貸与された官給品ではなく、各自衛官が自費で購入する私物のことだ。もちろん制服として認められており、通勤や勤務時に着用してもかまわない。
この簡易服にはジャンパーやセーターなどがあり、自衛隊基地内売店の通称「PX」で隊員向けに販売されている。
このジャンパー、自衛官が秋冬の通勤時に着用しているのをよく見かけるが、ジャンパー、セーターともに陸上自衛隊向けはOD、航空自衛隊向けはブルー(2008年に濃紺に変更)、海上自衛隊向けはブラックと、いずれも精悍なデザインで、さらに腕にはそれぞれ陸海空部隊のエンブレムを備える。肩にはエポレットがついており、階級章を装着できる。
自衛隊の略帽
通常、自衛官は制服時、制帽を着用するが、正式ではない簡易服として略帽を着用する場合もある。式典時でも着用でき制服や迷彩服どちらの場合でも着用できることから、利便性が高い。
略帽は3自衛隊でデザインが違い、現在3自衛隊において陸上自衛隊のみ、91式制服の制式化に併せ、略帽として「91式略帽」いわゆるベレーを制式化。
諸外国軍と同型のベレーで濃緑色をしており、これといった特徴はないが、自衛隊の徽章である桜星の帽章を装着する。
この略帽は自衛隊の防寒ジャンパと同じく、私物で購入するもので貸与品ではない。隊員はPXで自費購入する。
一方、空自の略帽には米軍同様、ギャリソンキャップが制式化
ギャリソンキャップは「サンダーバード」という映画で主人公たちが被る帽子としても有名で、その名も「サンダーバード帽」なんて呼ばれることもある。また、海上自衛隊の略帽は旧軍スタイルを踏襲しており、クラシカルだ。内帽としても使用できる。
諸外国軍のベレー帽の歴史と作法
米軍では2001年まで、べレー帽を着用できる兵士は特殊部隊やレンジャー部隊といったエリートフォーセスに限られていた。まさに精鋭部隊の証しであったのだ。その代表格はやはりアメリカ陸軍特殊部隊群・通称「グリーンベレー」だろう。
ところが2001年「兵士の士気高揚」を目的に一般の兵士も黒のベレーの着用が許可された。これには一般兵士からは歓迎の声があった一方、すでにベレーの着用を許可されていた特殊部隊の兵士からは反発の声が上がった。賛否両論の声が挙がったためか、現在では指示された場合のみしか着用が許可されない。
このように諸外国軍では特殊部隊や精鋭部隊の象徴とも言えるべき被服の一種だが、陸上自衛隊では特殊部隊ではなく、一般隊員も着用できる。略帽にベレー帽が存在するのは3自衛隊で陸自のみだが、私物扱いだ。理由はともかく、自衛官の装具や被服は官給品と私物が混在しているのが現状なのだ。
どの国の軍隊でもベレー帽の被り方は国際共通化されており、ベレー帽の型を格好よく形づけるのは苦労している。自衛隊でもお湯を使って隊員が手で「プレス」することで形を作る。
国連のブルーベレー
自衛隊は国連の平和維持活動にも参加しているため、国連公式仕様のブルーベレーもある。
自衛隊の制服のまとめ
自衛隊の制服の種類は3部隊で異なり、海上自衛隊のように階級や性差で異なる制服を着用する例もある。また、職種によっては必ずしも制服を着用するとは限らない場合もある。
以上、自衛隊の制服について簡略で概要を紹介した。