自衛隊の射撃訓練は基本的に自衛隊の施設内や郊外の演習場、訓練場、基本射撃場で行います。
陸自には「体力検定」、「格闘検定」、そして「射撃検定」という各人それぞれのスキルを格付けする三つの検定があります。射撃検定では、各隊員にそれぞれの射撃技術に応じてランクが付与されます。
基本射撃における実弾訓練では、基本射場などで200mから300m先の紙的、金属や木製の的を自動小銃で狙います。
まれに、確かに撃ったはずの弾丸が四次元空間に消えうせたのか、標的に命中せず、弾痕が的に見当たらないことがあります。これを”弾痕不明”と言います。心霊現象?いえ、射手が的を外しただけです。
![Strike And Tactical (ストライクアンドタクティカルマガジン) 2017年 11月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61qLuuMM%2BuL.jpg)
陸上自衛隊特殊部隊では的の間に隊員を立たせ、移動しながら的を撃ち抜くという特別な射撃訓練を行って根性を付けさせていますが、一般隊員にはそのような危険な訓練はありません。
なお、立たされた隊員の前に防弾ガラスがあるのかは不明です。
射撃場のうち、屋内射撃場は東京都内の駐屯地などの一部に設置されている屋内型の拳銃・小銃射撃場で、近隣に配慮して全く発射音が外に漏れない施設です。
警視庁の特殊部隊SATは、自衛隊の演習場で小銃の射撃訓練を行うこともあります。厚生労働省の麻薬取締官は警察や自衛隊とはまったく別に専用の屋内射撃場を持っており、そこで射撃訓練をすると、テレビの報道番組で紹介されていました。
ところで、自衛隊では小銃の側面にバケット状の袋を取り付けて薬きょうを回収しています。
陸自が配備しているM24対人狙撃銃は有効射程が1000メートルありますから、それに見合った距離での射撃訓練が行われます。
一方、海上自衛隊の艦艇乗員はやはり長い航海の間は船上での射撃訓練も行っており、空に揚げた風船を小銃や散弾銃(Benelli M3T)で撃つという訓練を行っています。
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小銃分解結合
もちろん、射撃訓練の前には小銃を取り扱うための基本教育が前期教育課程の中で行われます。銃の通常の分解整備を普通分解と呼びますが、分解の手順を覚え、部品名称も頭と体で暗記する座学で、何回も小銃をバラして早く正確に組み立てていきます。
いきなり教官から質問が飛ぶ場合もあります。
「キミ、この部品の名称言えるかな?」 「はい!RASであります!」 「ククク・・・キミは間違ってるからその場で腕立て10回だよ」 このように、間違うと体力錬成があるので気を抜けません。
いろいろな射撃姿勢
伏射と膝射は、もっとも射撃姿勢が安定し命中率が良く、自衛隊での小銃射撃における基本的な射撃姿勢です。
腹ばいになって両足を広げて体を安定させ、両肘を地面に立てて狙いを定めて撃つ伏射は「プローン」とも言います。
一方、『膝射』は立てた片足の膝こぞうに、左肘を立てて小銃を構えて撃つ姿勢です。これは寝撃ちに比べるとあまり安定感が良くありません。立射も標準的なスタイルです。
M3短機関銃を立射で射撃する陸自隊員。薬莢を足元へ落とすための特別なカバーが取り付けられている。
こちらはけん銃射撃のスタイル。本来、けん銃は幹部自衛官や砲手などに貸与される装備品で片手撃ちによる射撃訓練が行われていました。
しかし、昨今では直面すべき対テロ戦争の現実性から、閉所戦闘など左右どちらの敵にも咄嗟に対応できるように、また、より安定した姿勢であることから両手撃ちスタイルに変更されています。
9ミリけん銃の有効射程距離はたったの30メートル。しかも移動しながらの射撃では、なおさら当たらないものですが、陸自の特殊部隊「特殊作戦群」では歩きながら、あるいは走りながら標的をけん銃で撃つ訓練をしています。
ただ、2015年に公開されている警視庁・神奈川県警察特殊部隊SATの公開訓練動画ではSAT隊員が、MP5からP226Rけん銃へスイッチングする際に、両手射撃のほか、片手での射撃も披露していますから、この業界から片手撃ちが完全に廃れたわけではありません。
小銃に取り付けられる光学照準器とは?
自衛隊の小銃には、狙撃用のスコープ、それに近接戦闘用のダットサイトが搭載される場合もあります。

ダットサイトを装着した89式小銃を射撃する陸自隊員。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Brandon L. Saunders/released)
通常の照準用スコープが高倍率であるのに対して、ダットサイトは無倍率か低倍率になっています。見え方の違いは通常のスコープが、十字のクロスですが、ダットサイトは赤や緑色の光点(ドット)を電池駆動や放射性物質、あるいは太陽光でレンズの中央に投影させます。
このような仕組みで、ターゲットを素早く狙えるのがダットサイト、高倍率で遠くの目標を正確に狙うのがスコープと、それぞれ役割があります。
高倍率のスコープでサイティングした際の見え方。狙撃銃に搭載ならば、数百メートル先の目標を狙える。
ダットサイトのACOG(Advanced Combat Optical Gunsight)でサイティングした際の見え方。赤いドットがレンズ中央に浮かび上がっている。比較的近距離での交戦を考慮されて開発された光学照準器だ。
陸自では過去、 隊員が自費あるいは部隊単位で買ったタスコ(サイトロンジャパン)のMD-33型ダットサイトを小銃に載せ、研究を行ってきました。その結果、自衛隊の戦闘訓練においてもダットサイトが有効であることがわかり、現在では正式に官給品としてダットサイトの配備を行っています。

タスコに代わり、辰野や東芝電波プロダクツが製造を受注しており、正式名称を89式小銃用照準補助具と言います。
アメリカ軍では以前から広く配備されていますが、現在では陸自普通科連隊でもダットサイトはかなりポピュラーになっています。自衛隊のみならず、現在、警視庁などでも刑事部特殊捜査班がベレッタM92バーテックに、警備部のSATがMP5に搭載して運用しています。
薬莢を失くしたら部隊全員で見つかるまで休み返上で探し出す。隊員のロッカーまで何もかも探る。

Photo by Cpl. Jonathan Waldman (public domain)
A Japanese soldier assigned to the Western Army Infantry Regiment loads 5.56 mm rounds into weapon magazines before a live-fire exercise at San Clemente Island, Calif., Feb. 11, 2012.
連帯責任になり、見つかるまで探し出す
自衛隊では受領した弾丸と同じ数の空薬莢を返納しなければならないため、必ず撃ち終えたすべての弾丸の薬きょうを回収しています。
通常は薬きょうを回収するための袋状のカートキャッチャーが、小銃の側面に取り付けられていますが、想定中に気がつかず外れるなどして、万が一、薬きょうをなくしてしまった場合は部隊全員での大捜索が待っています。
えっ?ネタはよせって?いえいえ、本当のことです。
これは自衛隊を象徴する出来事として、時折ニュースになるほどです。
熊本県で陸上自衛隊が薬きょうを紛失し、1000人を超える態勢で捜索する事態となりました。 紛失したのは89式5.56ミリ小銃弾射ち殻薬きょうです。 第42普通科連隊は、25日午前、熊本県内の駐屯地から演習場まで木箱に入れて運んでいた薬きょうが、車両の荷台で散乱しているのに気づき、輸送した1万発のうち7発足りないことがわかりました。 その後、25日午後10時までに、3発を演習場の敷地内で、3発を一般道で発見し回収しました。 そして、26日午前6時から最終的に1300人態勢を組み探したところ、最後の1発を一般道で発見、延べ14時間で7発全てを回収しました。
引用元 TBS
http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye2526338.html
このニュースでは無事に全弾見つかったようですが、小さな薬きょうですから、大きな演習場の場合、くまなく探しても見つからない場合もあります。そんなときはどうするんでしょうか?
ある方法を使います。詳しく知りたい人は「そこが変だよ自衛隊!」を読んでください。 カラ薬きょうでこれだけの大騒ぎになるのですからもし実弾や実銃なら・・・・。「おいおい、いくらなんでも自衛隊が実弾を紛失するなんてありえないだろう」と考えてる方も多くいると思います。
実は95年に帯広の第五師団が鹿追町の演習場で行われた実弾射撃競技会において実弾を一発なくしてしまったのです。この「紛失事故」では連日1000人の隊員が捜索に投入されましたが、どうなったかは内緒です。
ただ、海外訓練では遠慮なくカラ薬莢を回収せずジャンジャン撃っている。
まあ、実弾はともかく、カラ薬きょうを無くすたびに1000人で探すのは一般の方や外国軍から見ればかなり奇異かもしれませんよね。
自衛隊員「・・・ということがあって大変だったぜ」
米兵 「lololololololwwwウソだろwwwマジありえないからwww」
自衛隊員「」
米兵「そんなんしてんの日本だけっしょwwwこれやるからしまっとけwwww」
自衛隊員「薬莢!アザースwwww」
薬きょうをなくして大捜索があったことを、日米合同演習の米兵と自衛隊との飲み会で言っても、信じてもらえることはないでしょうね。
2006年に起きた玖珠駐屯地武器亡失事件では、隊員の犯行により拳銃や小銃などが外部に持ち出されるという不祥事もありました。
また、2013年には陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)で隊員が89式小銃を紛失しており、いまだに見つかっていません。この紛失した89式小銃の捜索に当たった隊員は延べ人数で8万人。池の水を抜き、地雷探知機を使って土の中まで調べましたが、2015年現在も何の手がかりもなく発見に至っていません。
銃器の場合は当然、警務隊と警察の合同捜査が行われますが、警務隊では外部に持ち出されたものと断定しています。
この89式小銃紛失事件について現職幹部は「前代未聞の事態。厳格な武器管理を求められる自衛隊で、絶対に起きてはいけないことが起きた」と語っています。
自衛隊員の射撃技術は低いの?高いの?
「国際射撃大会でブービー賞だった自衛隊精鋭部隊」という記事が2012年の週刊文春に掲載されましたが、これは武器の選択を誤ったのが原因とされています。

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準2017/6/9 | Kindle本 二見龍
この大会への派遣では中央即応集団(現在の陸上総隊)の精鋭が選ばれたのですが、本来なら平成14年に採用されたM24SWS対人狙撃銃で臨むべき長射程の種目をダットサイトつきの89式で挑んだそうです。今回自衛隊が持っていった銃は拳銃と89式小銃とMINIMIだけ。
なぜM24を持っていかなかったのかは定かではありませんが、せめてスコープつきの64式でもあれば少しは結果が違ったかもしれません。
なお、これは2012年の結果ですが、2013年度の結果はなんと陸自が世界の軍隊と競合の中、9位になりました。
実弾を使わない仮想シミュレーターを使った射撃訓練や市街地戦闘訓練とは?

自衛隊は安全な仮想射撃訓練を重視している
ほかにも、陸自ではビデオシミュレーターを使った仮想射撃訓練も行っています。
自衛隊では安全に銃の訓練を行うために、実弾を使わない、イミテーションのライフル銃によるビデオシミュレーター訓練や、エアガンによる屋内や閉所でのCQB(近接戦闘)訓練、ペイントボールガンなどでもより実践的な訓練を行っています。
昨今では、弾丸の命中位置をセンサーで即座に判定する小火器射撃評価システムという装備が陸自に導入されています。
射手の手元に画面を備えた映像装置があり、そこに射撃の結果が映し出され、射手が射撃のみに集中できる利点があります。
89式の仮想射撃シミュレーターの実際の様子です。ビデオ映像に向かって銃を撃ちます。
銃はガスを利用し、89式小銃本来のリコイル・フィーリングとファイアリングサウンドも忠実に再現。
映像は多様なシーンを映し出すことが可能で、将来起きうるであろう日本国内での大規模なテロ、市街戦を想定した対テロ戦闘訓練も可能。映画「ヒート」さながらのオフィス街での銃撃戦はまさに未来の日本の街角。”三丁目の戦火”って感じです。震えが止まらない。
敵に命中すると人体がブバッ!とはじけ飛び、車両は爆発し、戦争ゲームのFPS、レインボーシックスも顔負け。
このように自衛隊では、安全で屋内でも行える実弾を使わない仮想訓練を導入しているわけです。
自衛隊はエアガンで訓練している!使っているガンはどこ製品?ジュールは規制値内?
なんと自衛隊は訓練で89式のエアガンを使っているらしい?(画像は実弾で撃ち合った奇跡の実銃89式)
自衛隊がエアガンで訓練しているというのは本当なのだろうか。実は本当なのだ。自衛隊の市街地戦闘訓練における近接戦闘訓練を支える安全資機材はなんとエアガンだったのである!君よ知るや、マルイの89!
実は、自衛隊では稀に実弾で撃ち合うこともありますが、2006年からはエアガンを用いた「近接戦闘訓練」いわゆるCQBトレーニングを正式なトレーニングメニューとして行っています。
なぜ、自衛隊がエアガンで訓練をするようになったのでしょうか。
なぜ自衛隊がエアガンで訓練することになったのか
そもそも、自衛隊では実弾を使わない実戦的な戦闘訓練として、以前から実銃に装着する「バトラー」と呼ばれるレーザー式射撃訓練装置を使って「よりリアルな」訓練を行っていました。
バトラーは実弾の代わりにレーザー光線を用いて命中判定をする交戦用訓練装置で、発光部を小銃、機関銃に装着し、受光部(ヒット・インジケーター)をハーネスで各隊員の身体に着装する装具です。

陸上自衛隊部隊訓練評価隊・・・専用の迷彩服まで配備した陸自のアグレッサー(仮想敵)部隊
現在、陸上自衛隊北富士駐屯地には普通科部隊の戦闘訓練で対抗部隊として活動する専門部隊、その名も「部隊訓練評価隊」が編制されています。
いわゆるアグレッサー部隊であり、バトラーを使って各地の普通科部隊に実戦的な訓練を施しています。
このバトラーは、隊員個人が身に着ける装具と小銃などに取り付けるパーツから構成されたレーザー光線による交戦訓練システムです。実弾を使用せず、安全に訓練ができるのが特徴です。
銃に取り付けられたレーザー発射装置から投影されたレーザー光が、隊員の身体の各部に取り付けられた受光部に受光すると、ブザーが鳴り被弾を知らせます。
現在は新たにアップグレードしたタイプが配備されており、被弾すると液晶モニターに被弾によるダメージの状態が表示されます。従来型に比べ、より細かな当たり判定が行われており、ゾンビ行為はできません。
専用の迷彩服と特別な塗装を施した専用車両
評価隊には平成21年度から、専用の迷彩服となる「対抗部隊用迷彩服」が配備されています。
これは陸上自衛隊でかつて配備されていた迷彩服1型のパターンとほぼ同じですが、やや、黄色みが強くなっており独特の色合いをしています。
また、評価隊には戦闘車両も配置されており、一般部隊では2色塗装にされている車両が評価隊では3色と、こちらも特別なカラーになっています。
また、対戦車火器や戦車にも装着が可能で、効果的な戦闘訓練が行えます。このシステムが描写された映画にアメリカ海兵隊教育隊の訓練と実戦を描いた「ハートブレイクリッジ Heartbreak Ridge」があります。
とはいっても、受光部が装着された部分しか命中判定ができず、おおまかな判定しかできませんでした。
さらに、昨今問題となっているゲリコマからの対処訓練として、陸自では市街地戦闘訓練が必要になってきました。
とくに建物内などでの近接戦闘にも対処する必要性があることから、全国の部隊では演習場内に専用の訓練施設を建設し、ビルや民家、スーパーなどといった実際の家屋を模した建物がつくられ、閉所における戦闘を学んでいるところです。
そして、そのために用いられるのが「閉所戦闘訓練用教材」こと89式タイプのエアガンです。
この東京マルイ製の電動ガン、実は以前から非公式な近接戦闘訓練メニューとして、一部の戦闘職種の部隊ではTMの電動ガンを使用して近接&閉所戦闘訓練(いわゆる建物内などでのCQB訓練)を行っていました。
2006年にTMから89式小銃のエアソフトガンが発売されましたが、実はこの製品の開発には自衛隊が公式協力しており図面が提供されました。
このため、過去に例のないほどリアルなエアガンが誕生しました。
自衛隊で使用されているものは自衛隊特別仕様の89式自動小銃型エアソフトガンです。市販品とどこが違うのかというと、ストックの色がOD、専用ガンケースに入れて納入されている・・・など。
部隊によっては銃身を各種カラーで塗色しています。
ミリブロNews様では、平成21年度 日米共同訓練~市街地戦闘(MOUT)編~にて米軍との合同訓練時に公開された銃身を紫色にした89式訓練銃の写真を掲載されています。
http://news.militaryblog.jp/e89821.html
ちなみに、このマルイ製89式エアガンは海外のドラマや映画にも登場しています。なぜか、台湾のテレビドラマBlack & White痞子英雄では反社会勢力側が使う銃として登場していました。
さらには、あの超大作「コマンドー」のロシア版リメイク作品「コマンドーR」にもマルイ製が登場しています。主人公の敵が日本の自衛隊なので・・・。
ストライクアンドタクティカルマガジン 2015年 07 月号 [雑誌]
B00ULU2B2E | SATマガジン出版 | 2015-05-27
自衛隊の89式電動ガン・・実はマルイよりも早く作っていた会社があった
マルイが89式電動ガンを開発し、販売を行ったのが2006年。実はそれより少し前に、89式電動ガンの開発を行っていた会社があります。それが「89R」を出したキャロット社。
もともと「89R」は既存のマルイ製電動ガンのパーツを利用した外装キットとして販売されていましたが、その後、キャロットでは完成済み89式電動ガンも販売していました(その直後にマルイが89式電動ガンを出した)。
キャロットでは「89R」を開発するにあたり、自衛隊や豊和工業から公式に図面提供などは一切受けていないそうです。協力を要請したかは定かではありませんが、おそらく時代が時代だけに受けたくても受けられなかったのだろうと思います。
当時の自衛隊は萌えキャラで悪乗りするような「開かれた組織」ではなく、そっち方面のゲートは閉じていたのです。だから、すべて市販の資料や写真、開発スタッフが駐屯地祭へ足を運んでの取材が開発ベースとなっています。
また、当時は自衛隊の銃器展示も比較的緩やかで、市民団体が市民に銃を触らせたとして自衛隊を告発することもなかったようです。
皮肉なことにキャロット製89式キットの再現度の意外なほどの高さは「正式に自衛隊が開発協力したマルイの89式」の発売によって、証明されてしまったこともゲーマーには興味深いそうです。
もちろん、自衛隊側から正式に図面を提供された東京マルイ製89式も、すべてが正確に作られているわけではありません。グリップにはモーターが入るため、実物より若干太くなってしまうほか、バッテリーへの雨水対策として、ハンドガードを実銃と異なる仕様にしたのも仕方がありません。
また、エアソフトガン・ユーザーへの安全性を優先させるために限られた素材で強度を出すように、肉厚の部分もあります。
さらには、あえて実物と細部を異なる作りにすることで、実銃のパーツなどを取り付けられないようにするという「実銃ユーザー」に対する安全面の配慮もされたうえでの開発です。
キャロットは89式の電動ガンではマルイほどの成功はしませんでしたが、現在キャロットは陸上自衛隊に89式のラバー製イミテーションを納入しており、この製品はとくに西部方面普通科連隊の水路潜入訓練で使用されるなど活躍しているようです。
自衛隊の訓練用89式・・ペイント弾も
さて「よりリアルな環境で戦闘訓練するのが狙い」との理由から、防衛省が制式に配備した89式エアガンでは着弾後、血のりのように赤くべっとり染まるペイント弾の使用も想定されています。
また、このほかにも自衛隊が採用している模擬銃にはペイントボール専用発射銃があります。海上自衛隊特殊部隊「特別警備隊」ではMP5を採用しているため、株式会社PDI製品のMP5型シミュレーター(ペイントボール発射タイプ)が海上自衛隊第一術科学校へ納入されています。また、PDIでも89式型訓練銃の開発研究がされています。
マルイの89式との違いは、6ミリBB弾ではなく11ミリのラバーボール弾やペイント弾が発射できる点および、駆動方式がガス圧です。
http://ascii.jp/elem/000/000/076/76461/index-2.html
さらにPDI社では、AK47やM4A1など、世界中の軍隊や警察が使用する小銃を訓練用資機材としてリアルに再現したPDIシミュレーターズという製品もラインナップしています。
これらは完全に銃刀法に適合しており、何ら問題なく規制の範囲内で使用できます。使用する弾丸は11ミリのペイントボール弾。アルミケースのカートに装てんされ、排出されます。このためアルミケースがコンクリ―トに落下すれば実銃同様の薬きょう落下音を奏でられ、益々リアルな訓練環境を演出できるとのこと。
ペイント弾といえば、新谷かおるさんの女性傭兵を主人公とした傑作作品「砂の薔薇」でもおなじみで、閉所や家屋内などで実戦的な訓練をするための安全な模擬弾です。着弾すると弾丸の中の水性塗料が飛び散るため命中判定が容易にできます。赤い塗料であれば血ノリのように。ペイント弾は警察や軍隊の訓練のほかスポーツのペイントボールゲイムなどでも使用されています。
2017年11月になると東京マルイでは2018年の新製品として同社が既に発売している89式電動ガンに続いて、ガスブローバックタイプの89式も発売すると発表しました。
すでに自衛隊に訓練用品を納入している一部の専門商社ではこの東京マルイ製の新商品89式ガスブローバックをカタログに掲載し、自衛隊へ売り込みをはかっています。
もともと、エアソフトガンによる訓練は米軍が始めた。
沖縄駐留アメリカ海兵隊では80年代、アサヒファイアーアームズという会社のFNC型エアガンを納入して訓練していたと80年代末のエアソフトガンのカタログに記載されていました。
また、グアムの警察ではユースエンジニアリング社のガスブローバック式MP5を使用して訓練を行っていたという事実もあります。自衛隊としてもエアガンでの訓練が実戦で役に立つと判断したから採用したわけです。
基本的にBB弾でも極端な近距離でのトレーニングでは、6ミリのプラスチック製BB弾と言えど、当たると痛いわけですから、自分の体に弾が当たらないようにするため、本能的に「弾が当たらない防衛技術」を、より恐怖心をもって学習できるわけです。
このように訓練の臨場感をさらにを強化するために、エアガンでも緊張感をもって訓練に臨めます。とくにエアガン訓練は日本では最も安全でクリーンな”射撃訓練”でしょう。
エアガンでは限界も・・・?
ただし、エアガンの訓練でもやはり限界があります。何より、エアガンと実銃では銃の操作手順も発射の反動も音も別物です。そこで、各国ではSimunition – Non-Lethal Training Ammunitionを導入する事例も増えています。
シミュニッションは「ノン・リーサル・トレーニング・アムニッション」の名のとおり、安全な訓練用資機材であり、各国の軍隊や法執行機関が導入しています。これは、実銃そのもので安全に訓練ができるシステムです。
在沖縄アメリカ海兵隊の訓練では、実銃とペイント弾による野外での実戦的な訓練が行われています。
これは実銃のM16アサルトライフルの機関部を模擬のペイント弾が発射できる専用部品に換装するシステムですが、弾丸の初速は日本のエアソフトガンよりも早く危険なため、兵士は眼だけでなく顔全体を守るためのSCOTT(スコット)のフルフェイスゴーグルマスクを着用します。
まとめ
- 自衛隊は射撃訓練を多様な課程で行う。
- ビデオシミュレーターを使った仮想的な訓練もある。
- 自衛隊は東京マルイ製で市販品とほぼ同じ89式電動エアガンで閉所戦闘訓練をしている。
- マルイのエアガン以外にもペイントガンを訓練に導入している。
こんなふうにまとまりました。なるほど、マルイのイミテーション89式も自衛隊にとっては立派な”訓練資材”ってわけだね!
オモチャを学習に取り入れる動きは、公立学校でのニンテンドーのゲーム機導入も目新しいけど、実は自衛隊や米軍のほうが一歩先なんだね!
というわけで、エアガンや、このようなビデオシミュレーターを使っての訓練は自衛隊で意外と普通に行われているんだね!
まあ、つまり・・・