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自衛隊の射撃訓練は基本的に自衛隊の施設内や郊外の演習場、訓練場、基本射撃場で行います。

陸自には「体力検定」、「格闘検定」、そして「射撃検定」という各人それぞれのスキルを格付けする三つの検定があります。射撃検定では、各隊員にそれぞれの射撃技術に応じてランクが付与されます。

基本射撃における実弾訓練では、基本射場などで200mから300m先の紙的、金属や木製の的を自動小銃で狙います。

まれに、射撃訓練時に確かに撃った弾丸が四次元空間に消えうせたのか、標的に命中せず、弾痕が的に見当たらないことがあります。これを”弾痕不明”と言います。心霊現象?いえ、射手が的を外しただけです。

陸上自衛隊特殊部隊では的の間に隊員を立たせ、移動しながら的を撃ち抜くという特別な射撃訓練を行って根性を付けさせていますが、一般隊員にはそのような危険な訓練はありません。

なお、立たされた隊員の前に防弾ガラスがあるのかは不明です。
64_new_2010_003tgert射撃場のうち、屋内射撃場は東京都内の駐屯地などの一部に設置されている屋内型の拳銃・小銃射撃場で、近隣に配慮して全く発射音が外に漏れない施設です。

警視庁の特殊部隊SATは、自衛隊の演習場で小銃の射撃訓練を行うこともあります。厚生労働省の麻薬取締官は警察や自衛隊とはまったく別に専用の屋内射撃場を持っており、そこで射撃訓練をすると、テレビの報道番組で紹介されていました。

ところで、自衛隊では小銃の側面にバケット状の袋を取り付けて薬きょうを回収しています。
陸自が配備しているM24という高性能狙撃銃は、有効射程が1000メートルありますから、それに見合った距離での射撃訓練が行われます。一方、海上自衛隊の艦艇乗員はやはり長い航海の間は船上での射撃訓練も行っており、空に揚げた風船を小銃や散弾銃(Benelli M3T)で撃つという訓練を行っています。


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小銃分解結合

もちろん、射撃訓練の前には小銃を取り扱うための基本教育が前期教育課程の中で行われます。銃の通常の分解整備を普通分解と呼びますが、分解の手順を覚え、部品名称も頭と体で暗記する座学で、何回も小銃をバラして早く正確に組み立てていきます。

いきなり教官から質問が飛ぶ場合もあります。

「キミ、この部品の名称言えるかな?」 「はい!RASであります!」 「ククク・・・キミはその場で腕立て10回だよ」 このように、間違うと体力錬成があるので気を抜けません。

いろいろな射撃姿勢

伏射と膝射は自衛隊での小銃射撃における基本的な射撃姿勢であり、もっとも射撃姿勢が安定し、命中しやすい撃ち方です。

腹ばいになって両足を広げて体を安定させ、両肘を地面に立てて狙いを定めて撃つ伏射は「プローン」とも言います。

一方、『膝射』は立てた片足の膝こぞうに、左肘を立てて小銃を構えて撃つ姿勢です。これは寝撃ちに比べるとあまり安定感が良くありません。立射も標準的なスタイルです。
m3smgrikujiM3短機関銃を立射で射撃する陸自隊員。薬莢を足元へ落とすための特別なカバーが取り付けられている。sig9mm_rikuji_inyouこちらはけん銃射撃のスタイル。本来、けん銃は幹部自衛官や砲手などに貸与される装備品で片手撃ちによる射撃訓練が行われていました。

しかし、昨今では、直面すべき対テロ戦争の現実性から、閉所戦闘など左右どちらの敵にも咄嗟に対応できるように、また、より安定した姿勢であることから両手撃ちスタイルに変更されています。

9ミリけん銃の有効射程距離はたったの30メートル。しかも移動しながらの射撃では、なおさら当たらないものですが、陸自の特殊部隊「特殊作戦群」では歩きながら、あるいは走りながら標的をけん銃で撃つ訓練をしています。

ただ、2015年に公開されている警視庁・神奈川県警察特殊部隊SATの公開訓練動画ではSAT隊員が、MP5からP226Rけん銃へスイッチングする際に、両手射撃のほか、片手での射撃も披露していますから、この業界から片手撃ちが完全に廃れたわけではありません。

小銃に取り付けられる光学照準器とは?

自衛隊の小銃には、狙撃用のスコープや、近接戦闘用のダットサイトが搭載される場合もあります。

PUCKAPUNYAL, VICTORIA, Australia -- A soldier from the Japanese Ground Self Defense Force engages targets from 450 meters during the Australian Army Skill at Arms Meeting here May 12. In its fifth meeting, the AASAM is a multilateral, multinational event allowing Marines to exchange skills, tactics, techniques and procedures with members of the Australian Army as well as other international militaries in friendly competition. (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Brandon L. Saunders/released)
ダットサイトを装着した89式小銃を射撃する陸自隊員。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Brandon L. Saunders/released)

通常の照準用スコープが高倍率であるのに対して、ダットサイトは無倍率か低倍率になっています。見え方の違いは通常のスコープが、十字のクロスですが、ダットサイトは赤や緑色の光点(ドット)を電池駆動や放射性物質、あるいは太陽光でレンズの中央に投影させます。

このような仕組みで、ターゲットを素早く狙えるのがダットサイト、高倍率で遠くの目標を正確に狙うのがスコープと、それぞれ役割があります。
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高倍率のスコープでサイティングした際の見え方。狙撃銃に搭載ならば、数百メートル先の目標を狙える。
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ダットサイトのACOG(Advanced Combat Optical Gunsight)でサイティングした際の見え方。赤いドットがレンズ中央に浮かび上がっている。比較的近距離での交戦を考慮されて開発された光学照準器だ。

陸自では過去、部隊単位で買ったタスコ(サイトロンジャパン)のMD-33型ダットサイトを小銃に載せ、研究を行ってきました。その結果、自衛隊の戦闘訓練においてもダットサイトが有効であることがわかり、現在では正式に官給品としてダットサイトの配備を行っています。

タスコに代わり、辰野や東芝電波プロダクツが製造を受注しており、正式名称を89式小銃用照準補助具と言います。

アメリカ軍では以前から広く配備されていますが、現在では陸自普通科連隊でもダットサイトはかなりポピュラーになっています。自衛隊のみならず、現在、警視庁などでも刑事部特殊捜査班がベレッタM92バーテックに、警備部のSATがMP5に搭載して運用しています。

薬莢を失くしたら部隊全員で見つかるまで休み返上で探し出す。隊員のロッカーまで何もかも探る。

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Photo by Cpl. Jonathan Waldman (public domain)
A Japanese soldier assigned to the Western Army Infantry Regiment loads 5.56 mm rounds into weapon magazines before a live-fire exercise at San Clemente Island, Calif., Feb. 11, 2012.

連帯責任になり、見つかるまで探し出す

自衛隊では受領した弾丸と同じ数の空薬莢を返納しなければならないため、必ず撃ち終えたすべての弾丸の薬きょうを回収しています。

通常は薬きょうを回収するための袋状のカートキャッチャーが、小銃の側面に取り付けられていますが、想定中に気がつかず外れるなどして、万が一、薬きょうをなくしてしまった場合は部隊全員での大捜索が待っています。

えっ?ネタはよせって?いえいえ、本当のことです。

これは自衛隊を象徴する出来事として、時折ニュースになるほどです。

熊本県で陸上自衛隊が薬きょうを紛失し、1000人を超える態勢で捜索する事態となりました。 紛失したのは89式5.56ミリ小銃弾射ち殻薬きょうです。 第42普通科連隊は、25日午前、熊本県内の駐屯地から演習場まで木箱に入れて運んでいた薬きょうが、車両の荷台で散乱しているのに気づき、輸送した1万発のうち7発足りないことがわかりました。 その後、25日午後10時までに、3発を演習場の敷地内で、3発を一般道で発見し回収しました。 そして、26日午前6時から最終的に1300人態勢を組み探したところ、最後の1発を一般道で発見、延べ14時間で7発全てを回収しました。

引用元 TBS
http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye2526338.html

上のニュースでは、無事に全弾見つかったようですが、小さな薬きょうですから、大きな演習場の場合、くまなく探しても見つからない場合もあります。そんなときはどうするんでしょうか?

ある方法を使います。詳しく知りたい人は「そこが変だよ自衛隊!」を読んでください。 カラ薬きょうでこれだけの大騒ぎになるのですからもし実弾や実銃なら・・・・。「おいおい、いくらなんでも自衛隊が実弾を紛失するなんてありえないだろう」と考えてる方も多くいると思います。

実は95年に帯広の第五師団が鹿追町の演習場で行われた実弾射撃競技会において実弾を一発なくしてしまったのです。この「紛失事故」では連日1000人の隊員が捜索に投入されましたが、どうなったかは内緒です。
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ただ、海外訓練では遠慮なくカラ薬莢を回収せずジャンジャン撃っている。

まあ、実弾はともかく、カラ薬きょうを無くすたびに1000人で探すのは一般の方や外国軍から見ればかなり奇異かもしれませんよね。

自衛隊員「・・・ということがあって大変だったぜ」
米兵 「lololololololwwwウソだろwwwマジありえないからwww」
自衛隊員「」
米兵「そんなんしてんの日本だけっしょwwwこれやるからしまっとけwwww」
自衛隊員「薬莢!アザースwwww」

薬きょうをなくして大捜索があったことを、日米合同演習の米兵と自衛隊との飲み会で言っても、信じてもらえることはないでしょうね。

2006年に起きた玖珠駐屯地武器亡失事件では、隊員の犯行により拳銃や小銃などが外部に持ち出されるという不祥事もありました。

また、2013年には陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)で隊員が89式小銃を紛失しており、いまだに見つかっていません。この紛失した89式小銃の捜索に当たった隊員は延べ人数で8万人。池の水を抜き、地雷探知機を使って土の中まで調べましたが、2015年現在も何の手がかりもなく発見に至っていません。

銃器の場合は当然、警務隊と警察の合同捜査が行われますが、警務隊では外部に持ち出されたものと断定しています。

この89式小銃紛失事件について現職幹部は「前代未聞の事態。厳格な武器管理を求められる自衛隊で、絶対に起きてはいけないことが起きた」と語っています。

自衛隊員の射撃技術は低いの?高いの?

「国際射撃大会でブービー賞だった自衛隊精鋭部隊」という記事が2012年の週刊文春に掲載されましたが、これは武器の選択を誤ったのが原因とされています。

この大会への派遣では中央即応集団の精鋭が選ばれたのですが、本来なら平成14年に採用されたM24SWS対人狙撃銃で臨むべき長射程の種目をダットサイトつきの89式で挑んだそうです。今回自衛隊が持っていった銃は拳銃と89式小銃とMINIMIだけ。

なぜM24を持っていかなかったのかは定かではありませんが、せめてスコープつきの64式でもあれば少しは結果が違ったかもしれません。

なお、これは2012年の結果ですが、2013年度の結果はなんと陸自が世界の軍隊と競合の中、9位になりました。

実弾を使わない射撃訓練もある

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自衛隊では安全に銃の訓練を行うために、実弾を使わない、イミテーションのライフル銃によるビデオシミュレーター訓練や、エアガンによる屋内や閉所でのCQB(近接戦闘)訓練、ペイントボールガンなどでもより実践的な訓練を行っています。

昨今では、弾丸の命中位置をセンサーで即座に判定する小火器射撃評価システムという装備が陸自に導入されています。

射手の手元に画面を備えた映像装置があり、そこに射撃の結果が映し出され、射手が射撃のみに集中できる利点があります。


記事の執筆者・著作権者 jieitaisaiyou.com


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