この記事では俗に『自衛隊体験入隊』と呼ばれる隊内生活体験制度についてご紹介いたします。
『学生や社会人を対象とした「隊内生活体験」が人気だけど、一人でも入隊可能?』
『最近、企業が自衛隊体験入隊させるのが流行ってるみたいやけど何が目的?』
『体験入隊ってお金かかるの?』
などなど昨今話題の自衛隊体験入隊に対する疑問は多いと思います。体験入隊プログラムに参加する個人、そして団体の方々の職業はさまざまで、とくに個人参加の方はその参加理由を「震災で(自衛隊の)大きな存在感を感じたから」など。東日本大震災での自衛隊の活動を挙げる人が多いようです。
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自衛隊が個人や団体の体験入隊制度を行う目的とは
自衛隊側では体験入隊を自衛隊の活動を国民に広く知ってもらうための広報と位置づけ「自衛隊への理解を深めるきっかけになれば」と個人、学生、それに民間企業や官公庁といった団体へ門戸を開いています。
部外の人が自衛隊の基地や駐屯地の中で隊員の実際の日課で数日間共に寝起きし、規律正しい生活を送る体験入隊を行い、自衛官としての基本的な作法を実体験してもらうことで自衛隊に対する理解を深めてもらえれば良い、という目的での試みだったのです。
一方、企業・団体側は組織の営利のため、新入社員、組織構成員に規律や礼儀、そして下の者は社長やリーダーなど、目上の者には這いつくばって絶対服従という体育会系の思想を求めており、高度な集団行動能力を安価または限りなく無料に近い費用の研修で身につけさせたいマネージメント・ソリーションを求めています。
企業側は自衛隊体験入隊を通して、社員が利己を没し、利益を追求する企業の構成員として利潤追求のため、いかに己を律することができる会社人間たりうるか見極めたい考えです。
となれば、自衛隊での共同合宿は日本企業にピッタリです。
このように双方の利益が一致した結果、2003年にはたった数社だった企業・団体による自衛隊体験入隊申し込みが、2013年度時点では数百社に増加。現在、全国では誰もが知る大手民間のみならず、官公庁でも体験入隊を教育研修として取り入れています。また新日鉄住金グループの日鉄エレックス北九州本社は30年以上にもわたって自衛隊への体験入隊によって新人研修を行っています。
中には社長の儲けのために働く会社員よりも、自衛隊のほうが自分に合ってると、体験入隊がきっかけで本職の自衛官になってしまう人も実際にいます。
さらに兵庫県宝塚市にある私立宝塚音楽学校の生徒、すなわち将来の宝塚歌劇団員たちも1989年から入校生全員が陸上自衛隊伊丹駐屯地にて基本教練の研修を受けています。
参考サイト様 宝塚音楽学校 自衛隊 基本教練風景 2009-2010
宝塚音楽学校の予科生は、登下校および校内では嬌声や笑い声が厳しく制限され、姿勢を正してまっすぐ前を見つめて、早歩きかつ、2列縦隊(最大6人)で行進しながら、すれ違う上級生らに挨拶敢行とのことですから、自衛隊仕込みですよね。
自衛隊の体験入隊(隊内生活体験)の資格や条件は?
誰でも参加可能?
自衛隊の体験入隊が可能な方は日本国籍を有していることが前提条件となっています。
個人参加は可能?
基本的に体験入隊はある程度人員のまとまったグループや団体および、企業等の申し込みが原則となっており、個人の場合は申し込みが難しい現状です。ただし、部隊によっては一人での参加も認められる場合があります。
陸上自衛隊北部方面隊(北海道)の行う「隊内生活体験」は一人での参加が可能という特色があります。この利点を活かし、道内のみならず、本州から参加する人もいます。ほかの部隊によっても、期間限定で体験入隊を実施し、個人の申し込みを受けられる場合もあるとのことですから、個別の相談でチャンスをつかめる可能性があります。
年齢制限は?
実施する部隊によって異なりますが、おおむね高校生以上となっています。なお、陸上自衛隊北部方面総監部が毎年7月から8月に実施している「青年サマーセッション」では20歳~35歳くらいまでの男女を対象に実施しています。
体験入隊は無料?
これらの研修制度では食事の費用と暖房光熱費、衣類のクリーニング代が徴収されます。二泊の研修の場合、平均で1800円~3000円程度とのことですが、内容によっては数万円と高額の場合もあります。
申し込み先は?
防衛省によると『体験入隊の受付窓口はすべてお住まいの近隣の地方協力本部になっている』とのことですので、まずはお近くの地方協力本部にたずねるのが良いでしょう。
3自衛隊のさまざまな”体験入隊”制度
陸海空自衛隊ではそれぞれの部隊で体験入隊制度を行っており、それぞれの企画で内容や費用に相違があります。費用は改定されている場合があります。
「青年サマーセッション」
陸上自衛隊北部方面総監部で青少年を対象に行っている一般的な体験入隊プログラムです。食事4食分、貸与した迷彩服などのクリーニング代、光熱費などで参加費は3,000円程度かかります。
「青少年広報」
海上自衛隊では夏休み期間中の中高生を対象とした「青少年広報」を実施しています。艦艇による体験航海など、海が好きな方には魅力的です。
「大学生等サマーツアー」
同ツアーでは大学生などを主な対象としており、陸上自衛隊駐屯地、航空自衛隊基地などで研修が行われます。戦闘機など各種航空機の見学、パイロットへの質問など、将来有望な大学生には魅力的な研修メニューが提供されます。
ただし、平成24年9月に行われた大学生ツアーの参加費用は食事代および、諸雑費として実費が25,000円と比較的高額。交通費も参加者負担です。
平成26年に行われた大学生等サマーツアーでは航空自衛隊入間基地から45名の参加者がC-1輸送機に搭乗し、宮崎県にある航空自衛隊新田原基地へ向かいました。
典拠元 自衛隊公式サイト http://www.mod.go.jp/j/publication/events/univ/summer/2014/
「女性専用自衛隊見学および体験ツアー」
現在、自衛隊では20代女性向けの体験入隊として、自衛官と同じ迷彩服を着用し、生活と訓練を一泊二日で体験する「パセリちゃんツアー」、それに20歳以上の女性を対象として基地内の施設や装備品などを見学する「女性のための一日自衛隊見学」が行われています。これらはどちらも公募による抽選です。
出典 https://www.mod.go.jp/j/publication/tour/paseri/index.html
パセリちゃんツアー(体験入隊)では自衛隊式の敬礼など基本教練を受け、隊員としての作法の体験のほか、自衛隊の食事を喫食したり、防衛装備品の見学のほか、音楽隊による音楽演奏、CH-47による「体験搭乗」などが行われます。
これら女性向けの体験入隊イベントも毎回応募が非常に多く、大盛況とのことです。
平成24年3月に伊丹駐屯地で行われた「女性のための一日自衛隊見学」での内容は訓練体験、防衛問題の概要説明、隊員との懇談、体験喫食というものでした。こちらは実費が3,000円になっています。
体験入隊時に体験できること
内容については各方面隊、駐屯地で多様ですが、一般的には自衛官の行う基本的作法、敬礼などの実習、これら基本教練を体験し、穴を掘ったり埋めたり、腕立て伏せをしたり、ロープ渡り体験、磁気コンパスを使ってコンパス行進、夜中に非常呼集されて災害派遣出動準備の体験などを通して、自衛隊の任務と役割を知り、そして個を没した乱れのない集団行動と厳しい規律を学びます。
さらに自衛官による防衛問題などの講話、天幕(テント)設営などの野営実習、ヘリコプターなどの航空機、戦車などの体験搭乗も用意されている場合があります。
運が良ければ、UH-1Jによる”体験搭乗”ができるかも……!?
朝日新聞の報道によれば、自衛隊も実際の訓練で使用している重さ3・5キロの東京マルイ製89式エアソフトガンを渡されて、動作訓練の体験などを受けた民間人女性が報じられていました。
さらに、戦闘糧食を実際に食べる実習も用意されている場合があります。
ほかにも食事の持ち込みが可能 ・体験期間は日帰りから2泊3日まで可能 ・訓練内容は要望に応じて組まれるなど、各団体の希望が研修に組み込まれるなど、柔軟に対応できるとのことです。
これら各体験入隊、ツアーなどの募集については防衛省公式サイト、各地方の自衛隊地方協力本部や師団の公式サイトにて案内されており、要チェックです。
自衛隊体験入隊のまとめ
- 体験入隊では団体申し込みが基本。受け入れ部隊にもよるが、個人の申し込みは限定的。
- 企業の新入社員の研修目的利用が増えている。
- 体験入隊は全国的に人気で、抽選の場合もある。
- 体験入隊には食費や光熱費、クリーニング代など費用が掛かり、実は無料ではない。
- 体験入隊の日数は二泊三日程度が一般的。
- 研修メニューは自衛官としての基本動作の研修、規律の向上などが主。
- 研修メニューは団体の希望などを考慮してくれる場合もある。
- 体験入隊は日本国籍を持つ人のみ可能。
- 「社長こそ入れよ」という新入社員の声もある。
- 会社辞めて本職の自衛官になる人もいる。