演習で自己完結能力の習熟を実施!熟練技が光るタコツボ掘りは過酷な任務

自衛隊では単に「自己完結」と言った場合、自己完結型や自己完結性を意味し、人が日常を送るために必要とされる食事から飲料水の確保、コミュニティの建設、病院の運営などのほぼすべてを自衛隊自らの装備と人員と職能で補う能力を表しています。

これらの能力を日々高めるために自衛隊では多様な訓練と演習を行っていますから、自衛隊の演習といっても、決して戦闘訓練ばかりではありません。

訓練と演習は違うの?

自衛隊における「訓練」とは、普段、各隊員の技量・練度を維持するために行われる日常の鍛錬です。一方、その鍛錬の成果を存分に発揮するのが本番となる「演習」です。

演習はシナリオ仕立てで行われるのが基本で、これがいわゆる「想定」です。本番たる演習では統括する「統裁官」が点数を付けるので、失敗など許されないし、指揮官の小さなミス1つで部隊が敵部隊に追い込まれてしまいます。

地下指揮所(広報用展示物)。

幹部自衛官は指揮の状況や、部隊の動かし方を細かく採点され、ボーナスに響く事は言うまでもないから、皆真剣です。なお、コンピューターを使った指揮所演習(図上演習)もあります。

また、通常の訓練と違い、この演習は当然、戦闘下を想定した状況中であり、外部との連絡は家族であっても一切禁止。恋人からメールが来なくなって寂しくなる彼女・彼氏も、演習が終われば日常に戻るので、安心してね。

演習の種類とさまざまな演習場

陸上自衛隊での演習の多くは演習場で行われます。穴掘りしかできないような小規模な演習場から、一五五ミリ、二〇三ミリ自走榴弾砲、七四式一〇五ミリ戦車砲をはじめ、普通科部隊の無反動砲・迫撃砲・対戦車誘導弾、施設料の地雷爆破訓練等までできる大規模な演習場まで、全国各地にさまざまあります。

地方ですと、駐屯地の傍に所在するほか、東京都内の駐屯地の場合は、移動に半日を要する場合もあり、結構大変です。春になるとそんな演習場に知ってか知らでか「不法侵入」して山菜を取っていく人も多くいます。

戦車が走り回り、実弾射撃訓練も行われる演習場に民間人が入り込むのは、あまりにも危険ですから、演習開始前に74式戦車の空砲でズドンとやると、あたふたと山菜取りの人たちやらいろんな人たちが出てくる場合もあります。北海道の演習場では総面積9600haの北海道大演習場や、アメリカ海兵隊も使用し、道内でも最大の矢臼別演習場(エゾリスいっぱい)が有名です。このような演習場において、陸上自衛隊では民間の輸送手段も活用して展開する協同転地演習を行います。

一方、本州の演習場では、やはり本州最大で富士の裾野に広がる静岡県の東富士演習場(9000ha)が有名でしょう。総工費25億円の市街地訓練場も設けられており、レーザー光線を利用した模擬交戦装置バトラーを使った演習や、89式エアガンでのCQB訓練が行えます。

年に一回の特別な演習、総合火力演習を行うのも東富士演習場です。また、東富士演習場に隣接するのが米海兵隊のキャンプ富士。

東富士演習場に訪れる米軍部隊の窓口でもあります。米軍は演習のたびに、銃弾どころかM4自動小銃まで置き忘れていくんだとか。そのたびに送り届けてあげるのが優しい自衛隊です。

演習場には廠舎(しょうしゃ)という簡易宿泊施設も

廠舎(しょうしゃ)とは演習場の中に設けられた簡易の宿泊施設で、通常は訓練にやってきた部隊の皆さんが寝起きしますが、小学生の少年が発見されたのも鹿部にある駒ヶ岳演習場内の廠舎(しょうしゃ)です。

廠舎は基本的に簡素なつくりで、屋根と壁、寝台しかありませんが、中にはPXも入っているところもあり、お菓子やおつまみ、清涼飲料水、訓練用品が売っています。

なお、購入はペリカではなく日本円で大丈夫ですが、ビールと焼き鳥はありません。ある廠舎には米兵向けに本場アメリカ式の「ドアが膝下からない洋式トイレ」があるといいます。

また、実弾下潜入訓練場というものもあります。これは隊員に機関銃火の下を潜らせ、度胸をつけさせるためのかなり危険性の高いド根性訓練施設です。実弾が頭の上を通過するどころか、すぐ真横で爆弾が爆発し、土砂が容赦なく降り注ぐという実に男臭く過酷な訓練場であります。

参考文献 
http://www.higashi-nagasaki.com/c2008/C2008_22_132.html
http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/neahq/pastevent/sennyu.htm

航空自衛隊には滑走路が爆撃・砲撃によって航空機の離着陸が不可能になった場合を想定した「実爆訓練」があります。

「状況」とは演習時における仮想戦闘のこと。

演習を統括する部隊長が「状況開始っ!」と宣言すると、直後にラッパが鳴り響き、隊員による突撃が敢行されるなど、戦いの火ぶたが切って落とされます。同様に、戦闘が終わるときは「状況終了っ!」との閉会宣言を行います。これは本来、統合幕僚監部の統合用語集にも掲載されている訓練上での仮想戦闘の開始を宣言する用語です。したがって、実戦では使わないものとされています。

ところが、漫画やアニメの中ではこの「状況開始」という言葉が実戦のオープニング宣言で使用されているものが多々あるとして、ネット上では話題になっています。それは誤用であるとして「状況開始」をはじめに誤用した者は誰なのかという議論にまで発展しているようです。

一説によると、機動警察パトレ○バー2 the Movieの監督ではないかとも言われていますが「演習に見せかけるため、あえて使ったのでは」という見方もあり、真相はよくわかっておらず、藪の中です。

一般には聞きなれぬ用語だけに、そのミステリアスな”誤用”にも一定の真実性が垣間見えて興味深いでしょう。

ほかにも、天候などの理由で演習を中止する場合の「状況中止」や、演習再開を意味する「状況再興」という用語も陸上自衛隊では適宜、使用していますから、皆さんもご家庭や老人会で使われてみてください。

訓練や演習では装備品等の紛失や水没に気を配るのが大変

もし万が一、訓練や演習において国から貸与されている官品の装備品を紛失してしまうと、あとで捜索が待っています。こんなことにならぬよう、隊員は装備品、とくに小物が落下、紛失しないようにヒモやカールコードでベルトに結び付ける縛着(ばくちゃく)を行います。

銃剣もしっかりとヒモでベルトと結び付けられています。

また、銃の部品なども脱落しないように、ビニルテープでぐるぐる巻きにする場合もあります。89式や64式、とくに62式機関銃を注意深く見てみると、ストックの端や2脚と銃本体にテープが巻かれているのがわかります。これは部品脱落防止のためによく行われるもっともポピュラーな手法です。

しかし、銃自体を落として無くしたら?

そんな事案も過去に実際あり、89式小銃が一丁現在までに行方不明となっています。

また、とくにレンジャー訓練や水路潜入訓練などでは着替えはもちろん、無線機、GPSなど水に濡れてはいけないものはプラスチックケースに入れて、ビニルテープで完封するか、市販のジップロックで、パッキングされるなどの防水処置が施されます。このため、ジップロックは隊員の愛用品です。また、自衛隊の駐屯地の中にあるお店・PXでは防水処置用のパックが販売されていますから、こちらを使う隊員も多くいます。写真は陸上自衛隊第2師団「第2偵察隊」のホームページから引用させていただいた、天塩川約14kmを使用した水路潜入訓練の様子です。隊員は89式小銃を構えたまま冷たい川の水に浸かり、潜入を行い、湖には無い河川の流れを読みつつ、漕舟等も行います。

野営と天幕

とりあえず、まあ、陸上自衛隊の演習では野営と天幕はつきものです。野営は一般に言うところのキャンプで、天幕とはテントの事。すなわち野外でテントを張ってそこで寝るわけです。

しかし、リア充が夏に大学のサークルの女子とやるビールとBBQと川に飛び込み付きの楽しいキャンプとは違いますぞ。パンツからシャツ、戦闘糧食、私物の携行糧食(カップめんやチョコレートなど)、携帯雨具、携帯えんぴ(スコップ)、ナイフ、ランプ詰め込んだ戦闘背嚢を背負っての行軍の後、粗末な野戦メシを食って天幕で寝ます。

虫がうるさくて眠れないし、怖いヘビが入ってくることも。とまあ、天幕は陸上自衛隊での演習では必需品。一方、航空自衛隊でも、ペトリオット部隊では野外に展開する演習を行っていますが、空自の場合は演習でも天幕を張らないことが多く、トイレ、流し台、ベッド、シャワー、給湯器、冷蔵庫、テーブル完備のキャンピングカーのようで快適な「自活車」で寝起きしており、陸自隊員が羨望のまなざしで見つめています。

ただ、陸自にも快適なトイレカーや、野外洗濯カー、野外入浴セットなど便利なグッズがあるんですよ。

演習で食うメシはどんなの?

別項でも紹介していますが、自衛隊の訓練や演習では戦闘糧食や、炊事用の車両「野外炊具」で調理した各種の食事を喫食します。さらに自衛隊では必要に応じて、基本食または増加食として携行食を支給できると決まっています。元自衛官が書いた書籍「そこが変だよ!自衛隊」によれば、かつて陸自では演習時に「コンバットレーション」と袋にカタカナで書かれた通称おやつセットが配給されたと紹介されています。

内容物は魚肉ソーセージ、みそぱん、ういろう、パックのりんごジュースといった食品や飲料。これを真似れば、どなたでも自宅やサバゲーフィールドで、手軽に自衛隊のオヤツを再現できます。

また、自衛隊の訓練で配給されるものとして面白い”食べ物”に凍結乾燥梅肉粒がありますが、これはその名のとおり梅肉を食べやすいように凍結乾燥させ、粒状にしたもので、アルミパックされています。オヤツというよりは夏場の訓練時の塩分補給が目的です。

外国軍との演習。米軍のみならず、フィリピン、中国、韓国軍などとも共同訓練を行っています。

日本が同盟を結ぶアメリカは言うまでもなく、各州の独立性と自治権限が強い連邦制の合衆国です。ですから、日本では単にアメリカ軍と一言で表現する場合が多いのですが、実際のところ、アメリカ軍は連邦軍と州軍という二つの軍で成り立っています。連邦軍兵士と州軍兵士との立場の違いを巡る例として、公民権運動の最中、アメリカ国内で黒人差別が激しかったころに起きた「リトルロック・セントラル高校事件」があげられるでしょう。このような合衆国のそれぞれの州兵(テキサス、バージニア、オレゴンなどさまざまです)も日本へやって来て、自衛隊と合同訓練をしています。世界中の人が知ってのとおり、アメリカ軍と日本自衛隊は同盟軍同士です。以前、機嫌をよくしたのか、アメリカ政府がリップサービスで「アメリカの最大の同盟国は日本だ!」と公言した際、カナダ政府が「……我々の立場はどうなるんですかねぇ」とネタにマジレスして、ふてくされたほどです。さて、自衛隊とアメリカ軍の共同訓練はこれまで、米西海岸や、日本国内の演習場で数々行われてきました。昨今では、自衛隊部隊が米国内に出向き、現地でアメリカ軍の教育を受けたり共同訓練することも珍しくありません。今後も自衛隊員はワールドワイドに活躍できるでしょう。キャンプ座間への米陸軍新司令部の移転に伴い、陸上自衛隊中央即応集団司令部も座間へ移転しています。今後も米軍と自衛隊は、東アジアのますますの安定を図るために密接な関係を維持してゆくことになるでしょう。また、北海道の矢臼別演習場や東富士演習場での海兵隊と自衛隊の合同演習は幾度となくニュースになっていますが、さらに在日米陸軍特殊部隊グリーンベレーで、陸上自衛隊特殊作戦群が研修を受けるなど、対テロ即応訓練の交流も進んでいます。

ちなみにこの動画は自衛隊と米軍のサバイバルゲームです。
http://www.youtube.com/watch?v=LALUCfY5i7I

海外での訓練や合同演習各種

さて、その海外訓練ですが、2012年9月に米領グアムにてアメリカ海兵隊と陸上自衛隊による、共同離島防衛のための訓練が行われました。グアム島西部の米海軍基地内の海岸で、陸自の海兵隊的な部隊と米国海兵隊の隊員が「同じゴムボートに乗って」上陸し、陸自隊員は付近を制圧する想定で小銃を構えつつ、偵察警戒を行っています。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012092201001239.html

報道関係者に公開された訓練シーンの写真
http://img.47news.jp/PN/201209/PN2012092201001304.-.-.CI0003.jpg

自衛隊の参加する世界規模の演習

コブラゴールド

米軍とタイ軍の主催で1982年から毎年行われている東南アジアでも最大の軍事演習です。韓国やマレーシアのほか、2005年から日本自衛隊も参加しています。

リムパック

アメリカ軍が主催する環太平洋合同演習と呼ばれる大規模な軍事演習です。ほぼ2年に一回開かれており、海上自衛隊は1980年から艦艇や航空機などが参加しています。アメリカの粋な計らいで、中国軍が2014年に初めて参加する予定です。ちなみに96年に開催されたリムパックにおいて、標的を曳航していた米軍の曳航機を、海自の艦艇が20ミリ機関砲で撃墜してしまいました。もちろん、撃墜した自衛官の身柄がアメリカに引き渡されることはありませんでした。かたい絆で結ばれていますから。

レッド・フラッグ・アラスカ演習

航空自衛隊では米軍の同盟軍も参加するエレメンドルフ・リチャードソン米軍統合基地で行われた「レッド・フラッグ・アラスカ演習」に参加しました。こちらも大規模な合同演習ですが、日本は96年から参加しています。2012年には330名ものエリート航空自衛官がアメリカにわたって防空訓練を行っています。自衛隊の高い技術に米兵からは「オー!エクセレント!スゴイヨネ!」の賞賛の声が上がりました。この演習において航空自衛隊は史上初、オーストラリア空軍とも共同訓練を実施しました。昨今、日本の自衛隊は急速にオーストラリア軍との交流を深めていますが、日本がオーストラリアと親しく付き合うのは対中戦略の一環と見られています。個人的にはインド軍と交流して自衛隊のカレーに磨きをかけてほしい。

米軍が見た自衛隊の実力

米軍が見た自衛隊の実力

4796670823 | 北村 淳 | 宝島社 | 2009-05-15

野戦築城

軍隊において陣地を制作することを築城と呼びますが、もちろん本当に「城」のような前線基地を作るわけではありません。防御のための掩体(えんたい)を作ったり、また障害物などを設けるなどの土木工事が主要な作業です。とくに陸自の野外訓練と言ったら「タコツボ掘り」なしには語れはしないでしょう。掩体には小銃手一人用の1メートル弱のものから、戦車が入れる大型の掩体まで多様なタコツボ堀りのスキルを身に着けるのです。このタコツボ作りを正式には掩体構築と呼びますが「さあ、みんな。これと同じように作るんだよ」と班長は手本を示すため、自ら実際に作ったタコツボを見せます。ベテラン陸曹になれば、いとも簡単に一人で深いタコツボを作れてしまいますが、しかし、このタコツボもただ穴を掘ればいいってもんじゃあ、ありませんよ。一人用のタコツボには底部に手りゅう弾避けの手榴弾孔を設けますし、穴の大きさは厳格に決まってもいますから、班長の指通りに絶対に守らなければなりません。なんで?戦車が踏んだ時に規定外のサイズだと、いとも簡単に踏みつぶされてしまうからです。タコツボ掘りには、自衛隊で個人装備として配備されている折り畳み式携帯シャベル、通称エンピを使っています。実は陸上自衛隊の活動においてはこのエンピ、実に幅広いシーンで活躍します。以前、配備されていた旧型の携帯シャベルはアメリカ軍のものとほぼ同じ形状をしており、現行の三つ折りエンピに比べ長い柄が特徴です。現行型は、カバー全体にすっぽりと収納できてスマートです。展開角度によってはクワとしても使えて利便性が高いのも特徴。なお、エンピはほかにも演習場の隅でウンピをする時の穴を掘るのにも活用されます。このような理由から、穴の詳しいサイズなども防衛機密になるとされますから、アナどってはいけません。

陸自で最も人気の高いイベント「総合火力演習」とは?年に一回の特別な公開演習

毎年8月頃になると、静岡県御殿場市の静岡県御殿場市東富士演習場(畑岡地区)で実施されている陸自主催の大規模公開演習であり陸自で最も人気の高い公開イベントがこの「総合火力演習」です。目的は隊員の能力向上と国民への広報であり、一般人を対象にした陸自の大規模な公開演習で実弾をふんだんに使う訓練展示でもあります。砲撃、狙撃銃による狙撃展示、戦車やヘリコプター、多様な火砲などによる実弾射撃を間近に見る事ができます。戦闘機の爆弾投下もありますが、すぐ近くに観客がいるので爆弾は模擬です。なお、天候が悪いと航空自衛隊が参加しないことがあります。この総合火力演習、観覧するには入場券が必要で、希望者は防衛省へ応募がのうえ、厳格な抽選で選ばれています。憧れの10式戦車やアパッチ攻撃ヘリコプターによる実弾射撃、狙撃手によるM24を使用した狙撃も目の前で行われるので自衛隊マニアにとってはこの総合火力演習、一度は見学してみたいイベントではあるそうですが、はがきかインターネットによる応募で厳格な抽選が行われ、その倍率は年度によっては28倍とも言われているそうです。決して、自衛官が親しい人や美人女性に入場券を配り歩いてるわけではありません。そういうわけで、ちょっとやそっとじゃ参加できないのが、この総火演です。

まとめ

以上、簡略ですが、主に陸自の訓練と演習を説明いたしました。