陸海空の3自衛隊ではそれぞれ戦闘用、輸送等用、観測/哨戒用、練習用、早期警戒用など任務ごとに多種多様な航空機が配備されている。
自衛隊にも多くの女性パイロットがおり、女性隊員の操縦士任用については比較的柔軟であったが、あくまでそれらは戦闘を目的としない航空機のみに限られていた。すなわち、戦闘ヘリや戦闘機といった第一線で戦闘任務に就く航空機の操縦から、女性隊員は遠ざけられていたのだ。
女性自衛官を戦闘任務から遠ざける……これは防衛省による『母性保護』という名目で行われていた政策のひとつであり、自主規制であった。
ところが2015年になると、防衛省が空自における女性自衛官の戦闘機パイロット配置制限を廃し、女性の任用を推し進めた。
さらに2016年3月15日、空自に続き、戦車狩りを生業とする陸自の対戦車ヘリAH-1Sのパイロットに女性隊員を任用すると突如として発表。女性操縦士が誕生した。
これにより2020年現在、航空自衛隊では戦闘機パイロット、陸上自衛隊には戦闘ヘリパイロットに女性隊員が任用されている。
海上自衛隊でもP-3C対潜哨戒機の機長や副機長に女性隊員が任用されている。今後も自衛隊の女性パイロット、それも戦闘を目的とした航空機操縦士への任用が相次ぐと見られる。
自衛隊女性パイロットを取り上げた写真集「自衛隊レディース 空飛ぶ大和撫子」
自衛隊関連の写真集や著書を多数出版しているジャーナリストでカメラマンの宮嶋茂樹氏の著書に、「自衛隊レディース 空飛ぶ大和撫子」という写真集がある。
本書は3自衛隊で活躍する女性パイロットを多数の写真と共に紹介しているもので、飛行中の彼女たち女性自衛官の写真が豊富だ。また、彼女たちから自衛隊パイロットを目指す受験生へのメッセージも同時収録されており、パイロットを目指す女性は必見だ。さらにパイロットだけでなく、政府専用機の女性客室乗務員、早期警戒管制機の機上兵器管制官の女性自衛官も掲載されており、資料が大変豊富だ。それでは掲載されている女性隊員をご紹介していきたい。
陸上自衛隊からは大型ヘリCH-47パイロットである志賀雅代2尉。高校時代、弓道を極めた志賀2尉は陸自入隊後、自衛隊体育学校で4年間、アーチェリーの選手候補として活躍。さらに彼女の人生は陸曹操縦課程の試験に一発合格したことでさらに輝かしさを極めていく。
UH-1のパイロットを皮切りにキャリアをスタートさせた志賀2尉はUH-1Jを経て、さらに大きな輸送ヘリCH-47Jチヌークの操縦士に挑んだ。2012年には第一輸送ヘリコプター群に所属し、操縦教官を務めている。彼女の人生を変えたのは自衛官募集のポスターであり、広報のチレンジャーであった。
そして航空自衛隊からは一文字裕子1尉と逢坂麗1尉。いずれもC-1輸送機の機長だ。福井県出身で防衛大卒の一文字裕子1尉は同期にC-1機墜落事故で殉職した藤本あい3佐(2階級特別昇任)がおり、彼女の供養のために操縦を極めるとの決意を語る。
一方、海上自衛隊からは対潜哨戒ヘリSH-60Jの機長、下大追香織1尉と黒木利佳2尉。下大追1尉は航空学生の身長制限ギリギリで受験し、見事に合格したという。
さらに渋谷寿子2尉は高校卒業後、航空学生合格、厚木航空基地にてP-3Cを飛ばす。彼女はフラワーアレンジメントが趣味だが、いざグリーンのフライトスーツに身を包み、海自マークの刻印されたフライトバッグを片手にタラップを上り乗機する姿は凛々しい。
父もまた海上自衛隊のパイロットであった渋谷2尉は、迷うことなく海上航空の道へ。パイロットになるために握力が必要だと知ると、彼女は毎日グリップマシンでトレーニングしたそう。
※「自衛隊レディース 空飛ぶ大和撫子」は2008年に出版されたもので、ご紹介した女性隊員らの階級やキャリアは当時掲載された内容をそのまま引用した。