予備自衛官と予備自衛官補の違い

簡単に言えば、予備自衛官とは自衛隊退職後に民間企業などで働く元自衛官が自ら志願して任用される予備役制度。対して予備自衛官補は自衛官経験が一切ない人が自ら志願して任用される予備役制度だ。つまり、元自衛官か、まったく自衛官経歴がないかの違いだが、年間の訓練日数や義務などにも相違がある。

平時において常に維持されている自衛官を常備自衛官と呼ぶが、予備自衛官の場合、普段は民間企業などで民間人として働いている。なお、予備自衛官を雇った事業者には国から補助金が出ている。

そして防衛招集命令、災害招集命令、国民保護等招集命令により招集されると、出頭した日をもって予備から正式な自衛官となり、常備自衛官とともに活動を行うのだ。

東日本大震災では自衛隊史上初めて、予備自衛官が召集されたが、災害派遣はもとより、いざ戦争が起きた場合にも召集され、武器を持ち、常備自衛官とともに任務に就くと取り決められている。

予備自衛官の運用事務は各地の地方協力本部が行っており、予備自衛官召集訓練において、年間5日間の訓練を受けなければならない。

また予備自衛官の身分は非常勤の特別職国家公務員であり、任官者には予備自衛官手当・訓練招集手当が支給される。

予備自衛官に迷彩服や銃は貸与されているの?

予備自衛官に貸与されるのは常備部隊からは退役した旧式の66式鉄帽など隊員と同等の迷彩服ほか装備品一式だ。これらは銃を含め、召集時に毎回貸与される。そのため、訓練実施日に貸与されるたび、迷彩服に階級章を縫いつけるのが予備自衛官の訓練の特徴だ。

訓練など

まず、予備自衛官として任務を遂行するため体力検定が重要だが、自衛官の基本的技術として必要な小銃射撃も必修科目になっている。毎年の射撃訓練では射撃検定が行われ、200メートル先の的を89式自動小銃で狙う。得点によって合否があり、しっかり記録に残るため真剣に臨まなければならない。市街地戦闘訓練では昨今、自衛隊も設置した訓練施設でおなじみの「市街地戦闘」を学ぶ。

災害派遣に関する訓練では各種のレスキュー機材を使用した訓練も行うが、隊員が災害派遣された場合に適用される法律や権限をも学ぶ。さらに野戦で必要となる野外衛生という救護訓練を行う。

また、特殊武器防護訓練では福島第一原発でも使用されている簡易防護服「タイベックス」の使用方法と、使用後の処理方法などを学ぶ。

陸自が採用する「即応予備自衛官制度」とは?

予備自衛官の中でも、とくに士気が高い者が任用される陸自のみの制度、それが即応予備自衛官

平成9年度から陸上自衛隊限定で始まった同制度は、これまでの予備自衛官制度と異なる画期的な制度だ。その名が示すとおり、即応性の高い予備要員として、一般予備自衛官よりも訓練・出頭回数が多く義務付けられている。

自衛隊経験のない民間人を採用する予備自衛官補制度とは

これまでの予備自衛官制度のほかに、2001年(平成13年)に創設され、2002年度から陸上自衛隊のみで採用されている制度、それが「予備自衛官補」だ。

これまで、予備自衛官補(一般)の採用における年齢要件は「18歳以上34歳未満」であったが、令和6年1月22日に防衛省は「18歳以上52歳未満」への緩和を公示した。

出典 防衛省公式サイト https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/01/22a.html

自衛官不足が常態化している自衛隊が新たに「予備自衛官補」の年齢制限を52歳未満までに拡大した。これまでの上限は34歳となっており、大幅な引き上げとなる。

こちらも普段は社会人として定職に就き、3年間で50日の訓練を行って有事に備える非常勤の自衛隊員だ。しかし、予備自衛官補は予備自衛官と違い、自衛隊経験の無い者を任用する制度となっている。

一般大学に通いながら、幹部候補生を目指す学生が、その士気向上の為に志願するケースが目立つ。

予備自衛官補に任用された者は非常勤の防衛省職員(特別職国家公務員)となり、国際法上の正規戦闘員として戦闘を行う権限もあるほか、教育訓練を受けると教育訓練招集手当が支給され、有事の際に防衛招集に応じると出動手当てが支給される点も予備自衛官と同じだ。

ただし、常備自衛官や予備自衛官と違い、予備自衛官補に階級はない。また、即応予備には有事等の場合、常備自衛官とともに防衛招集、国民保護等招集あるいは治安招集に応じ出頭する義務があるが、予備自衛官補は任用中「教育訓練に応じる義務」のみを有し、防衛招集や国民保護等招集に従う義務や災害招集に応じる義務はない。

一般公募および技能公募予備自衛官補の教育内容

予備自衛官補の区分には、主に駐屯地や防衛関連施設の警備その他後方支援を実施する『一般区分』と、医療資格取得者や語学技能者を対象とした『技能区分』の2種がある。

一般公募予備自衛官補は一般予備役隊員として勤務するコースで、基本教練(隊列行進や敬礼など)、歩哨・斥候、野戦築城、長距離行進、自動小銃の分解結合、戦闘訓練、射撃訓練等を3年間で合計50日間教育を受ける。

技能公募予備自衛官補は医師などの難関資格者が採用される制度で、基本教練(隊列行進や敬礼など)、歩哨・斥候、野戦築城、長距離行進、自動小銃の分解結合、戦闘訓練、射撃訓練等が行われるが、訓練日数は短く、2年間で合計10日となっている。

試験の概要と試験レベル

予備自衛官補の採用に当たっては筆記試験と身体検査が行われるが、警察や消防と違って腕立て伏せや腹筋などの体力試験はない。一方、筆記試験は国数社理英が満遍なく出題される濃密な内容となっており、常備自衛官を目指すコースである「自衛官候補生」採用試験よりも難易度が高く設定されている傾向にある。作文の例題では「国の防衛に対して思うこと」 などといったものが出題される。

※参考文献 『自衛隊広報誌 MAMOR』扶桑社 発行 など