自衛隊パイロットの装備と携行品は?
自衛隊の配備する航空機には固定翼機、回転翼機のほか、ティルト・ローター機のオスプレイがあります。これらの航空機操縦士はフライトスーツを着用し、ハーネスをつけた上から必要な装備品を収納したベストを着用します。
Contents
航空自衛隊の戦闘機パイロットに見る「生存用入組品」
航空自衛隊の戦闘機パイロットでは、離陸時間が近づくと救命装備室で浮き袋の機能がある救命胴衣と、パラシュートにつなぐトルソハーネス、そして重力で血が身体の下方へ下がるのを防ぐ耐Gスーツなど、必要な装備品を身に付けます。
戦闘機パイロットは非常事態に対処するため、生存用入組品と呼ばれるサバイバルグッズを携行(多くの救命装備はまとめられて射出座席の下にコンテナ組み込み)します。これらの各種生存用入組品を見ていきましょう。
サバイバルナイフ
まずはサバイバル用品の基本とも言える「サバイバルナイフ」。航空自衛隊では複数の種類のナイフを配備しているようです。
こちらは株式会社セイワさんが航空自衛隊に納入しているT-6300型サバイバルナイフです。釣具(釣り針、疑似針、かみつぶし、テグス)、火打石、サバイバルカード、コンパス、防水型LEDライトなどがシステマチックに収納。救命筏あるいは無人島で、非常食あるいはヤシガニを食べつくしたあとは、やはり付属の釣具セットを使って魚を釣り、ナイフで捌いて食べるのでしょうか。釣りのテクニックも普段から身に着けたいものです。まさに生存自活への第一歩を踏み出すためのアイテムがサバイバルナイフというわけです。
救命保温具
耐寒用の保温装備品として60度の発熱を70時間維持する救命保温具とレスキューシートも組み入れられます。
こちらの救命保温具も株式会社セイワさんが納入しており、最大温度80度、平均温度50度、持続時間60時間を維持する高性能なタイプです。
医薬品
医薬品として救急医療キットと野外用救急包帯を組み入れています。国内法では医官を除き、止血剤を携行できませんので、一般的な家庭用救急箱の中身に準じています。ちなみにリップクリームまで入っています。
海水脱塩剤
海水から真水を作る栗田工業製「海水脱塩剤」。ポリ容器入りの「救命水」も入ってますが、使いきれば雨が降らない限り、海水を飲まなければなりません。当然そのままでは飲めませんから、脱塩処理をして塩分濃度を0.05%以下にします。
その他
ほかにも「艦艇や上空の航空機に発見を促すための装備」として、煙と閃光が出る信号筒(昼/夜各別)、打ち上げ花火のようなペンシルガンと弾薬、防水携帯灯、太陽を反射させて使うシグナル・ミラー、さらに海面着色剤もあります。
また面白いものとしては捜索機のレーダーを反射するためにガスボンベで膨らませ、上空へ上げる風船キットが入っています。
操縦士の命を守るために必要な資機材、それが自衛隊の「生存用入組品」です。
いま助けに行くぞ!それまで食って待て!万が一の救命糧食は『ガンバレ食』だ!
忘れてはいけません。もちろん、救命糧食も携行します。自衛隊では食堂の食事をはじめとして、さまざまな飯が隊員に配給されますが、救命糧食とはどんなメシでしょうか。
その名のとおり、救命を目的としたもので、主に艦艇や航空機に通常搭載されている非常食なのです。航空自衛隊では紙ケースに真空パックされた6食分のビスケット・タイプの「A食品」と、ゼリータイプの「B食品」で構成されています。日本人の嗜好に合うよう和菓子風味で食べやすく工夫されています。
ところでこの救命糧食、別名「ガンバレ食」とも呼ばれています。
なぜかというと、箱の中に「頑張れ、救助は必ずやってくる!」というメッセージが書かれた防水紙が入っているためです。脱出した乗員たちはこの紙を見て元気を出すわけです。
実は一般販売もされていますので、興味があればご試食を。
ゼリー&クッキーセットタイプとクッキーのみタイプがあります。賞味期限は製造日より5年間とのことで、長期保管も当然大丈夫。自宅や車などに常備しておくと万が一の災害時にも安心。
このような航空機の非常事態においては、パイロットや乗員を救助するために24時間の即応体制をとっているのが、同じ航空自衛隊に編成された「航空救難団」です。航空自衛隊の戦闘機パイロットが着る耐Gスーツとは?
戦闘機のパイロットが飛行中、体に受ける加速度(G)は、ときにブラックアウトやレッドアウトなどを引き起こして、操縦に深刻な影響を与えます。
このうち、血液が脳へ充分に巡らずに虚血状態となり、足へ集中することで起きる『ブラックアウト』と呼ばれる失神状態は、四肢を締めつける耐Gスーツを着用することで防げます。
現代の戦闘機はこの耐Gスーツなしで操縦することは極めて困難です。
自衛隊のパイロットは拳銃を持つの?
『エネミーライン』など戦争映画を見ていると敵の支配勢力内で撃墜され脱出した戦闘機のパイロットは拳銃片手に四方を逃げ回るのがお約束です。また『ブラックホークダウン』では、撃墜されたUH-60ブラックホークのパイロットはサブマシンガンで武装していました。
これら映画に登場する米軍ではパイロットの護身用小型武器の携行が比較的当たり前のように描写されていますよね。
ベトナム戦争時代、米空軍の研究所にてパイロットの自衛用としてブッシュマスターという小銃が開発されたこともあります。実際、アメリカ軍では戦闘機、戦闘ヘリのパイロットは拳銃を携行して訓練を行っています。当然、本国での訓練がそうであるように日本国内でも私たちの頭の上を銃を持った米兵が日本の航空法に縛られず縦横無尽に低く飛んでいます。
では、自衛隊のパイロットも銃を持つのでしょうか。
陸上自衛隊に関していえば、携行して訓練飛行する場合もありますが、航空自衛隊の戦闘機や各種パイロットは訓練やスクランブルでも携行しません。
ただし、海外においては携行すると考えたほうが自然でしょう。
参考文献 プロが教える飛行機のメカニズム ナツメ社