アルジェリア人質事件と自衛隊法改正で陸上自衛隊に新配備となった新型車両・輸送防護車とは!



2013年1月16日に発生したアルジェリア人質事件による自衛隊法改正により、自衛隊による陸上輸送にて邦人救出が可能となった。新たに付与された任務のため、陸上自衛隊では新型の装甲車両を配備する運びとなった。(画像引用元 毎日新聞社の報道)

今回の自衛隊法改正では自衛隊が邦人救出のために外国で「陸上輸送」が可能となったが、その際の使用を想定した装備として、ブッシュマスター式の「輸送防護車」が新たな調達の運びとなり、現在、陸上自衛隊中央即応連隊に編成されている誘導輸送隊にて4両が配備され試験運用されている。

輸送防護車は横幅が大型トラックとほぼ同じで、国内の公道を走行する際に制限や許可申請を必要とせず、すでに陸上自衛隊で広く配備されている軽装甲機動車や、装輪装甲車などのように柔軟に運用できるのが特徴だ。

輸送防護車はイラクやアフガニスタンでの対テロ戦争で路上に仕掛けられた即席の爆破装置(IED)による(中略)が多発した米軍が2007年に購入し、使用してきた。

引用元 毎日新聞社 「輸送防護車海外テロでの邦人対象に…陸自が配備」

http://mainichi.jp/articles/20151218/k00/00m/040/022000c

そして輸送防護車の最大の利点は、航空自衛隊のC-130輸送機による空輸が可能であることなのだ。


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輸送防護車のベースモデル「ブッシュマスター」とは

今回、陸自が導入した輸送防護車はオーストラリアのAustralian Defence Industries(ADI)社が開発し、現在はフランスの総合電機メーカーThales(タレス)が製造販売している「ブッシュマスター防護機動車(Bushmaster Protected Mobility Vehicle)」だ。

とくに、日本向けに改良されている面があるかどうかは不明だが、空調装置が搭載されており、とくにオーストラリア軍が作戦行動をとる際、兵士に快適な環境を提供する狙いがある。車体底部は地雷の爆風を逃すためV字型に設計されている。

通常は最大3丁の機関銃を車両ハッチ付近に搭載し、自衛手段とするが、オプションで車内から操作できる遠隔操縦型機関銃RAVEN R-400 RWSを架装することも可能だ。

これまでにオースラリア軍では陸軍及び空軍で配備実績があるほか、イギリスやオランダでも採用されている。

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「ブッシュマスター」の車内画像 Photo by U.S. Army Sgt. S. Patrick McCollum (public domain)

ブッシュマスターには9名の完全武装の兵員および、三日分の食料と水などの物資を積み込むことができる。

輸送防護車の主な装備と仕様

陸上自衛隊の輸送防護車にはミニミ軽機関銃が搭載されるほか、ワイヤーカッター、ウインチなどが搭載されている。また、内部にはクーラーが搭載されており、車内環境は良好だ。

「輸送防護車は使えない」との一部からの指摘

一方で、例のごとく軍事評論家でジャーナリストの清谷信一さんが「輸送防護車は使えない」と辛辣に断言している。

同氏は自身が実際に海外でブッシュマスターに試乗した経験から、同車を装甲兵員輸送車としては高く評価する一方で、陸上自衛隊が実際に活動しうるであろう海外の現場と現在の運用手段では「使えない」と断言する。

同氏はその理由について、輸送防護車と同程度の対爆性能を有した野戦救急車が現状では一両も陸上自衛隊に配備されていないことを挙げている。さらに攻撃を受けた際の応急修理や、横転状態から復旧させるための工作車両や回収車も必要だが、配備されていないとして、バックアップ面での不備を指摘している。

現在、ブッシュマスターには基本モデルを改修し、野戦救急車仕様や工作車仕様タイプもラインナップされているが、自衛隊では今回それらを導入していない。

また同氏は、ブッシュマスターの基本モデルは完全武装の兵員を本来輸送するためのものであり、民間人救出の場合、幼児や妊婦などを搬送するには適さないことも挙げており「そもそも、ブッシュマスターは最適な選択だったのだろうか」と強く憤っている。

ブッシュマスターはオーストラリア以外にオランダ、英国なども採用しているが、このブッシュマスター=輸送防護車だけを導入しても邦人救出作戦は実行できない。無理をすれば多大な犠牲を出して失敗する。

典拠元:朝日新聞デジタル
「日本はどこへ――安保法を考える政治・国際陸自が導入した輸送防護車は使えない机上の空論では済まない邦人救出の現場 清谷信一」
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

引用した上記の記事において同氏は輸送防護車のみの配備となった今回の導入について、大きな疑問を呈し、邦人救出は大変厳しいと断言する。

今後、陸上自衛隊では輸送防護車をどのように運用していくのかはまだ試験段階だが、ブッシュマスター導入は海外での邦人救出における陸上輸送実施のための足掛かりとなることは間違いなさそうだ。

「輸送防護車」まとめ

  1. 導入にはアルジェリア人質事件および自衛隊法改正により「陸上輸送」が可能になった背景がある。
  2. 海外での使用を想定している。
  3. 調達単価は約1.75億円。ライセンスではなく完成品を購入し輸入している。
  4. 小火器による攻撃及び地雷、IEDによる対爆性を持つことがイラク戦争で証明されている。
  5. ただし、戦闘を考慮した車両ではない。
  6. 輸送防護車を運用するには、本来、随行する野戦救急車や野戦工作・回収車が必要になる。
  7. ブッシュマスターには野戦救急車や野戦工作・回収車タイプもあるが、自衛隊は導入しなかった。
  8. 現在配備先は陸上自衛隊中央即応連隊である。
  9. 輸送防護車は航空自衛隊の大型輸送機で空輸が可能。
  10. 本来は兵員輸送用であり、幼児や妊婦の輸送には適さない。

このようにまとめた。

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